中学1年生の冬だったと思う。
制服の上から紺色のオーバーを着て、学校に向かうバス停の横に掲げられた写真を眺めていた。
皇太子殿下と、皇太子妃に決まった正田美智子さんの写真だった。
このニュースは連日とり上げられ、初めての民間から皇室へのお輿入れだということで、日本中の関心の的であった。
そして、国民がこぞって祝福した世紀の結婚式がやってきた。
中学2年生になりたての頃だ。
パレードの様子はテレビでも放映されたが、より大画面で臨場感を感じたいという気持ちから、
「10円ニュース見に行こうよ」ということになった。
当時、渋谷の東急文化会館に映画館がいくつか入っていて、地下1階の「東急ジャーナル」で、10円ニュースというものをやっていた。
入場料は、なんと10円。
タイムリーなニュース映画を集めて放映する。
学校帰りに友だちと映画館に入った。
大画面に騎馬隊が写り込んできて、馬車がやってきた。
見とれていた。
皇太子殿下は、嬉しそうでリラックスして見えた。
美智子妃殿下は、やや緊張の面持ちという印象だった。
映画館を出ると、同じ制服を着た男子があちこちに見えた。
彼らも見に来てたんだ。
忌まわしい戦争が終わって13年余り、平和を謳歌しつつ高度経済成長への道を突き進もうとしているとき、
日本人は未来に希望を抱くことができた、そのような中での華麗な出来事だった。
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