第79話 「路傍の植物」

purification fountain思春期

 夏休みに植物採集の宿題が出た。
   

 「いやだなあ」
   

このように、一回の作業では終わらない、何段階もの作業があるものは大の苦手。
めんどくさくて、やる気がしない。
   

先生は「夏休みにどこかへ行くでしょう。ぜひ、そこの植物を採集してください」と言ったので、そんな計画もなかった私は憂鬱だった。

ずっとほったらかしていた。

   

 友だちから来た暑中見舞いの葉書には、「〇〇の祖母のところに行った時に採集しました」と書いてあった。

登校日に、軽井沢の植物を集めたという話や、信州の父の実家に行って採集した、などの話が聞こえてきて、ますます憂鬱になった。

   

 いよいよ期日も迫り、採集した植物を、1週間ほどにする必要があるが、その日数もなくなってきた。

どこで植物採集したらいいんだよ、とブーブー言っていると、母が「深大寺じんだいじにでも行ったら?」と言った。

   

「深大寺」は、電車を使えばうちから1時間もかからないところにある、けっこう有名なお寺だが、まだ行ったことがなかった。

そこに行けば、いろいろな植物がえているのかと思い、めんどくさがる母をせっついて、一緒に深大寺へ向かった。神代じんだい植物公園ができる前のことだ。

   

 行ってみると、採集できるような植物がある場所でもなく、「ないじゃない」と不機嫌になりながら歩いた。
   

「その辺の草を採ったら?」と母が言ったので、道端やその辺の草を引き抜いて帰ってきた。それを新聞紙に挟んで、一応押し葉にしている体裁ていさいをとった。

   

 数日すると、かさかさになり、それらしくなった。

   

押し葉

   

台紙に貼り付けようというときになって、あれ? 草の名前書かなきゃいけないじゃん、と気づいた。

ああ、なんてこったと思いつつ、一番安い植物辞典を買って調べたが、同じものが見当たらない。

   

「これに似ているから、これにしておこう」と適当に名前を書いて、何枚かのお粗末なものを重ね、表紙をつけた。

さて、題名をどうしよう。みんなは「〇〇の植物」と立派な名前をつけているようだ。
   

またブーブー言っていると、母が、「路傍ろぼうの植物にしといたら?」と言ったので、それを採用し「路傍の植物」と書いて提出した。
   

意外にも、この題名が先生の目に留まり、「路傍の植物かあ、いいねえ」と言った。ウフフと思った。

   

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