第84話 セーラー服

sailor-style-school-uniform and gakuran思春期

   
 高校の制服はセーラー服だった。

中学の制服があまりにも色気がなかったので、ちょっと嬉しかったが、不都合な点があった。
   

Vに開いた胸元の作りだ。

一般的にはVの下半分ぐらい、デルタ地帯のように当て布があるが、それがなかった。
   

夏はいいが、

冬になると、スースーして寒い。

   

男子の制服は詰襟つめえりだったので、胸元が寒いということは、ないはずだった。

不公平だなあと思った。

   
   

 校舎はとても古く、教室にはお印のようにスチームが設置されていたが、

上に腰掛けると暖かい程度で、暖房の機能はほとんど果たしていなかった。
   

それで、セーラー服の上からカーディガンを着ようとしたわけだが、学校から禁止されたのだ。
   

どうして?

カーディガンを着ると、セーラーの襟が隠れて制服が認識されないからだという。
   

なぜ認識されないといけないのか、納得できなかった。
   

学校としては、皆がそろって同じセーラー服を着ている図が望ましい、と思ったのかもしれない。
   

学校というものは、このような不合理で本質には関係のないことにこだわる傾向がある。

   

セーラーの襟が見えるようにカーディガンを着ると、Vのところが露出しているから意味がない。
   

それでも、私たちは文句をたらたら言いながら従った。

少しでも暖かくなるように、セーラー服の下にVネックのセーターを着たりした。

   
   

 夏服は6月からだが、5月でも暑い日がある。

冬服は、ジャンパースカートの上からセーラー服をかぶる形なので、暑くて汗臭くて不快だった。
   

学校帰りのバスに、素敵なドレスを着た若い女性が乗ってきた。

それを見て思った。

「早く大人になりたいなあ。

 そしてこのむさくるしい制服から解放されたい!」

   
   

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