第112話 サン=テグジュペリとの出会い「人間の土地」

Le Petit Prince 2青年期

 学生時代に大枚をはたいて買ったレコードがある。

ジェラール・フィリップが「Le Petit Prince(星の王子さま)」を朗読しているLPだ。私の宝物。

   

 高校生の時、「星の王子さま」が女子の間でブームになっていた。

私は、へそ曲がりなところがあって、みんながこぞって「いい、いい」というものに対し、なぜか拒絶反応を起こしてしまい、読もうとしなかった。

また、童話を読んで「これ、大好き」と言いたがる、かまとと女子の趣味だと勘違いしていたのだ。

   

 大学生になり、授業で「星の王子さま」が取り上げられた。

   

このひとたちに、あたらしい友だちができたよといっても、
なかみのあることは なにひとつきいてこないだろう。

つまり、
「その子のこえってどんなこえ? 
 すきなあそびはなんなの? 
 チョウチョはあつめてる?」とはいわずに、

「その子いくつ? 
 なんにんきょうだい? 
 たいじゅうは? 
 お父さんはどれだけかせぐの?」とかきいてくる。

 それでわかったつもりなんだ。
   

「あのときの王子くん」Le Petit Prince(星の王子さま)
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳

青空文庫 http://aozora.binb.jp/reader/main.html?cid=46817

   
と、ここを読んだ瞬間、サン=テグジュペリってなんて素敵なんだろう、これは御伽噺おとぎばなしじゃない、哲学書なんだと思った。

勘違いしていた自分を恥じた。
   

   

 そして、さらに衝撃を受け、胸を熱くして読んだのが、担任の先生から勧められた「人間の土地」だった。
   

ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。
   

「人間の土地」サン=テグジュペリ 堀口大學 訳 新潮文庫

   
という、序文の書き出しから、もう心を捉えられる。

   

序文の中ほどから最後にかけて、定期航空便の操縦士であった頃の彼が、最初の夜間飛行で見た景観から得たインスピレーションを、次のように述べている。
   

それは、星かげのように、平野のそこここに、ともしびばかりが輝く暗夜だった。

 あのともしびの一つ一つは、見わたすかぎり一面の闇の大海原の中にも、なお人間の心という奇蹟が存在することを示していた。

―中略― 

 努めなければならないのは、自分を完成することだ。
試みなければならないのは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っているあのともしびたちと、心を通じあうことだ。
   

「人間の土地」サン=テグジュペリ 堀口大學 訳 新潮文庫

   
序文を読んだだけでも、心が満たされる思いだった。

   

 人間の本質を鋭く突きつつも、その存在を愛おしむ心、人への優しさが滲み、人間はもともと素晴らしい存在なのだ、それに気づこう、というメッセージを受け取った。

彼との出会いから、自分が生きていくときの、よりどころが見つかった気がした。
   

部活の体験や、友だちとの交流なども通しつつ、サン=テグジュペリとの出会いが、何を大切にしていったらいいのかという指針を与えてくれたと思う。
   

人間の土地

   

注 青空文庫 図書カード:No.46817
  https://www.aozora.gr.jp/cards/001265/card46817.html

※「星の王子さま」の著作権は、日本では、2005年に失効しています。
挿絵も、サン=テグジュペリ本人によるものですので、同じく失効しています。
本記事の画像は、
https://www.aozora.gr.jp/cards/001265/files/46817_24670.html
よりダウンロードして使わせていただきました。

   

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