第65話 中学生って子どもなの?大人なの?

Angry boy 思春期

   
 中学校というところはどんなところか、見た経験もないし、初めは緊張していた。

入ってみると、なんとなくまとまりがなく、みなバラバラな感じだった。

お昼休みや放課後は、それぞれに遊びまくっていた。

   

グランドでは主に部活をやっているが、その他の校舎と校舎の間や、体育館の道具置き場の脇とか、学校中の場所を使って、卓球やテニス、バスケ、バレーボール、砂場で相撲を取っている男子もいた。

   

また、学校帰りに近くの野球場(今はないが)に寄って、プロ野球のオープン戦を見たりした。

先生も一緒にである。
   

こんな状態なので、授業中や集会などでは私語が多く、全校生徒が講堂に集まっての集会などでは、ガヤガヤとてもうるさかった。

   

 あるとき私たちの学校に、自衛隊の中央音楽隊という、いわゆる吹奏楽団が演奏に訪れたことがある。
   

演奏に先立って団長さんが、

「この学校に来るにあたって先輩から、『あの学校の生徒たちは、ものすごくうるさくて人の話を全然聞かないから、そのつもりで行くように』と言われました」

と挨拶された。
   

それを聞いて私たちは、恐縮してシュンとするどころか大笑いしてしまった。

ほんとに無礼極まりない子どもたちであった。

しかし演奏が始まると、とても素晴らしかったので、みな静かに聴いたのだった。

    

 そんなある日、社会の授業の時、みんなうるさくおしゃべりをしていて、先生の話をちゃんと聞いていなかった。

すると先生が立腹して、「君たちに授業する気がなくなった」と教室を出て行ってしまったのである。

みんな、「あれ? どうしようかなあ」というふうな気持ちになった。

   

 その時、学級委員をしていた男子が前に出てきた。

その子は私と同じ歳なのか? と思うほど背が高くて大人っぽかった。
   

彼は、先生が机の上に置きっぱなしにしていった出席簿を机に叩きつけて激怒した。

「みんな、なんとも思わないのか! 反省しろ!」

「先生を迎えに行ってくる」と言って出て行った。

みなその勢いにすっかり呑まれて、シーンとなった。

自分たち、いくらなんでもやりすぎだったな、と反省したときだった。

   

 私はとても子どもっぽい方だったが、「ありがとう」の代わりに「恐れ入ります」と言うなど、すでに奥様かと思うほど大人っぽい人もいた。

中学校というのは子どもから大人に変わっていくスピードが、バラバラに混在するところだったんだなあ、と今思う。

   

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