第115話 立ち木に激突 その1 大変なことに

norikuradake青年期

 毎年5月に新人合宿があり、4年の時のそれは、(のり)(くら)で行われた。

乗鞍岳の頂上より少し下の「位ヶ(くらいが)(はら)」というところにひろがる残雪で練習した。

   

4年になると、合宿には自分の行きたいときに行く程度で、参加する人は少ないが、この時、私は4年女子の代表のような形で参加した。

   

 午前の練習が終わり、小屋に向かって滑り降りていくとき、反対方向から滑ってきた部員とぶつかりそうになるのを避けようとして、近くの立ち木に「バシーン!」と衝突した。

反射的に顔をよけようとしたために、お腹で衝撃を受けた形になった。

一瞬、頭の中がハチャメチャになった感じがして、息が止まったと思った。

そして、正気に戻り、みんなが心配そうにのぞき込んでいた。

   

誰かにおんぶされて小屋に戻り、しばらく横になっていたが、だんだんお腹が痛くなり、気持ちが悪くなり、具合が悪くなってきた。

ただ事じゃないな、と感じていた。

   

 間もなく、救助用のスノーボート(人力で運ぶ)で下ろして、病院に連れて行こうということになったらしい。

同期の男子と3年の女子主任が、いっしょについて下りることになった。

   

ついにスノーボートに乗るのか。

いつもスキー場でスノーボートに乗せられていく人を見ては「気の毒になあ」と思っていたのが、自分にお鉢が回ってくるとは。

   

普通のスキー場ではなく、乗鞍の残雪の上を下ろしていくのだから、大変だったらしい。途中で気持ちが悪くなり、嘔吐したりした。

   

   

下りたところに、営林署かなにかの車が待っていてくれた。それに乗り、山道を下った。

この時は、やっと息をしているような感じだった。

窓から外を見ると、道の脇の山肌から、チョロチョロと雪解け水が流れているのが見えた。

それが命に満ちているように見え、自分から離れていくように感じた。

   

 松本の駅に着くと、そこからはタクシーに乗った。

同期の男子が、迷わず信州大学の付属病院へ行くよう頼んだ。

   

タクシーから病院の中まで、彼がおんぶしてくれた。私は診察を受けている間に、もうヨレヨレという感じになっていた。
   

結果、「お腹を開いてみるからね」と言われ、「どのぐらい?」と聞くと、「このくらい」と、親指と人差し指を5センチぐらい広げて見せてくれたのだが……。

さて、どうなったのか、それはこの続きで。

   

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