第26話 高原列車は行く

radio 学童期(関西編)

     
 今の日本には、あらゆるジャンルの音楽、また世界中の音楽が溢れている。

日本で生まれる音楽にも様々なスタイルのものがあるが、当時は、アメリカからのジャズ、

そして「あかいーりんごに、くちびーるよーせーてー……注1 から始まった、流行歌というような音楽が主だったと思う。

   

リンゴの唄 – 並木路子、霧島 昇 (1946)

   

 その中で、ラジオ歌謡というジャンルがあった。

演歌でもなく、流行歌とも少し違うような……。

   

私の耳に心地よく入ってきたのが

きーしゃのーまどかーら、ハンケーチーふーれーばー、まーきばのおとめーが、はなたーばーなーげーるー……」注2

と始まる「高原列車は行く」という歌である。

明るくて軽快な歌だった。

   

高原列車は行く(昭和29年) 岡本敦郎あつお

   

 そのほかに記憶に残っているのは「山のけむり」という歌だ。

これはちょっと物寂しいようなメロディーの曲だったが、

ラジオ歌謡というのは歌唱指導しながら毎日続けて流すので、覚えてしまうのだった。

   

 「しろいはなーがさいーてたー……」注3 という「白い花の咲く頃」だったか、これもさんざん聞いたような気がする。

この中の「だまってうつむいてた、おさげがみ注3 の、

お下げ髪というのはどんな髪型なのか、ずっと気になっていたものだ。

   

収録曲一覧

   

 それから、「上海帰りのリル」だ。

この「リルーリルー、どこにいるのかリールー……だれかリールをしらないか注4

という切ない歌詞とメロディーが、意味が分からないままに胸にしみた。

今この歌を歌ってみると、胸が苦しくて切なくて、涙が出てしまう。

   

 あと、独特な声と歌い方で一世を風靡ふうびしていたのが、かさシズ子さんだ。

トオキョブギウギ……ワクワク……注5 と真似していた。

   

笠置シズ子 – 東京ブギウギ Tokyo Boogie Woogie (1947)

   

 そして、「美空ひばりちゃん」という天才歌手がいた。

学校に行くと「ひばりちゃんはえらいんだよ」と、とても評判だったが、そのころはよく知らなかった。

今改めてひばりさんの歌を聞くと、こんなに歌が上手い人は、まずいないだろうなあと思う。

   

 「いっぱいのーコーヒからー、ゆめのはなさくこともあるー注6 とか、

はーなかごかかえてー……アイルランドのむらむすめー注7 とか、

快いメロディーの歌もよく耳に入ったが、どうやらこれらは、もっと古い歌らしい。

母が歌っていたのかもしれない。

記憶をたどるとき、いつも音楽がいっしょにくっついてくる。

   

一杯のコーヒーから 霧島昇、ミス・コロムビア

   

注1「リンゴの唄」 作詞 サトウハチロー
注2「高原列車は行く」 作詞 丘灯至夫
注3「白い花の咲く頃」 作詞 寺尾智沙
注4「上海帰りのリル」 作詞 東条寿三郎
注5「東京ブギウギ」 作詞 鈴木勝
注6「一杯のコーヒーから」 作詞 藤浦洸
注7「アイルランドの娘」 作詞 H.RUBY  訳詞 島田磬也

   

収録曲一覧

   

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