ひょっこりひょうたん島
「チロリン村とくるみの木」が、テレビのお子さま番組の中心だった時代。そこからバトンを受け継いだのが「ひょっこりひょうたん島」だ。
「チロリン村~」と同じく人形劇で、今のアニメとは違い、表情からパフォーマンスまで自由自在ではないが、表情が豊かで、動きも面白かったというイメージが残っている。
特に、歌が楽しかった。
たとえば、魔女リカの歌で、「リカ、リカ、魔女リカ、……アメリカ、アフリカ、ドミニカ、ジャポニカ……」注1 と韻を踏む感じや、マジョルカ島をもじったらしいものや、発想と展開の自由さなど、さすが井上ひさしさん、だった。
また、ドン・ガバチョがお金の単位を「ガバ」にすると決め、「1ガバ、2ガバス、3ガバス」と2以上には「S」がついているところに、私たちは大喜びした。
大学生だったが、友だちと「あれって子ども向きっていうより、私たち向きだよね」と言い合ったものだ。
夢であいましょう
歌やコント、ダンスにトークと、盛りだくさんの音楽バラエティー番組だ。中嶋弘子さんの、首を横に傾げる挨拶が印象的だった。
今から思うと、とてもおしゃれな番組だったと思う。NHKだったから、途中にCMが入ることもなく、楽しい時間に浸っていた。
ここから、永六輔さんと中村八大さんのコンビで、たくさんの名曲が誕生した。もっとも有名なのは、坂本九さんの「上を向いて歩こう」
テレビで初めて見た坂本九さんは「悲しき60才」という歌で、「ヤムスタファ、ヤー、ムースターファ……」注2 と歌っていた。顔全部が笑顔という感じだった。
それから「ステキなタイミング」という歌が流行り、そして「上を向いて歩こう」でブレイクしたのだ。
高校1年生だった私たちは、自習の時間に勉強せず、友だちが配った歌詞カードを見て「上を向いて歩こう」を合唱していた。
ほかにも、梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」とか、ジェリー藤尾さんの「遠くへ行きたい」、九重佑三子さんの「ウェディングドレス」、渥美清さんの「ひとりもの」、北島三郎さんの「帰ろかな」などなど、名曲が次々に生まれた。
「上を向いて歩こう」とベートーヴェン「皇帝」が似てる?
「上を向いて歩こう」で、一つ印象に残っているエピソードがある。
中村八大さんが、これを作曲する時、最初のメロディーがベートーヴェンのピアノコンチェルト第5番「皇帝」第1楽章の初めの部分と同じになっちゃった、というのである。
その部分を八大さんがピアノで弾いた。たしかに同じだ。
作曲家は、自分の頭に刻み込まれているメロディーが、自然に無意識に出てきて使ってしまうことがあるそうだ。面白いなあと思った。
土曜日の夜は、「夢であいましょう」を見て満足し、「さあ寝よう」と布団に入ったものだ。
注1 「魔女リカのテーマ」作詞:井上 ひさし/山元 譲久 作曲:宇野 誠一郎
注2 「悲しき60才」訳詞:青島 幸男
NHKアーカイブス「連続人形劇 チロリン村とくるみの木」
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010061_00000
NHKアーカイブス「連続人形劇 ひょっこりひょうたん島」
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010108_00000
NHKアーカイブス「夢であいましょう」
https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=entertainment004
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