第7話 進駐軍

check pattern幼児期

 「進駐軍」という言葉をよく耳にしたことを覚えている。

当時、日本はまだ、アメリカの占領下にあった。

   

 母に連れられて、たぶん銀座あたりを歩いていたときのことだ。

ヘルメットをかぶって鉄砲を手にした、アメリカの兵隊さんのような人が、ビルの入り口のところに門番のように立っているのを見つけ、好奇心の強い私は、そばまで近寄ってじろじろと眺めた。

母は急いで私の手を引っ張り「見ちゃダメ」と言った。

見ただけなんだけど。

   

 大きなかごや箱を、これまた特大の風呂敷に包んで、それを背中にかついだおばさんが、時々家にやってきた。

玄関先にいろいろな品物を広げ、説明して「どうですか?」と買うことを勧めた。

進駐軍の放出物資を売っていたのだ。

   

 すると私は必ず、玄関に座って応対する母の背中に後ろから覆いかぶさって、チューインガムを買ってとせがんだ。

母はチューインガムのほかに、たいてい「じゃ、これいただくわ」と何か一つ買っていた。

おそらく、必要ないけど一つぐらい買ってあげないといけないと思っていたのだろう、と今は思う。

   

このチューインガムには、普通のガムと風船ガムの二種類あり、私が好きだったのは普通のガムの方だ。

白い粒を4つ重ねて銀紙で包んであり、それを青っぽい模様のテープ状の紙でくるりと巻いてあった。

においや味が大好きで、今でもあの味が忘れられない。どうして日本にないのかなあと思う。

   

 あるとき母が、洋服を売っている店に入り、黒っぽい赤と白のチェックのコートを買い、いたく気に入って父に見せていた。

父は「セコハンだろう?」と言った。

セコハンは「中古」という意味で、英語のSecondhandを、日本人の耳で「セコハン」と聞き取ったのだろう。

これも進駐軍放出物資の衣類を売ってる店で、いまならリサイクルショップといったところか。
   

そういえば「セコハン娘」という歌もあったような気がする。どんな歌だか覚えていないが。

   

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