4年生の学芸会の出し物は「浦島太郎」だった。
乙姫様の役に当たるわけがないと思っていたが、
思った通り、学年で一番かわいいと評判の髪の長い女の子になった。
結局私は舞台の袖で、ハーモニカでBGMを演奏するグループの一人となった。
初め、乙姫様でなくても、何か魚の役でもいいから舞台に出たいなあと思っていた。
お客さんからは全然見えないところでハーモニカを吹くなんて、損な役回りだと思っていた。
学芸会当日、浦島太郎の役は、学年でも有名な芸達者の男の子で、本当に見事な演技だった。
最後に玉手箱をあけてしまい、瞬く間におじいさんになるところの演技は素晴らしく、大喝采のうちに幕が下りた。
とその瞬間、先生がまっしぐらに私たちハーモニカ隊のところにすっ飛んできたのだ。
そして、「ハーモニカ、すごくよかったよー。音がきれいだった。
まるでバイオリンみたいに聞こえたよ!」と大絶賛してくれたのである。
私たちハーモニカ隊は大喜びだった。
うれしくてたまらなかった。
ハーモニカ隊でよかった、と心から思った。
先生は縁の下の力持ちのような私たちのことを、ちゃんと心に留めていたのだ。
そして真っ先に褒めてくれた。
このときの嬉しさは忘れられない。
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