第106話 月山その3 すごい人たち、そして下山

Gassan Midagahara’s Marshlands 青年期

イワナっておいしい

 雨で練習が休みになった日、男子二人がイワナを釣るんだと言ったので、一緒について行った。
   

小川の流れる湿地を歩いた。

雪解け水を含んだ、ふわふわのこけ絨毯じゅうたんの上を歩いた。

ところどころに可愛い花が群生している。

霧に包まれ、ファンタジーの世界のようだった。

ちょうは二尾だった。

   

   

 小屋に帰り、囲炉裏で焼いて食べたが、とてもおいしかった。
   

ところが、その日の夕食に、小屋のおじさんが一人一匹ずつイワナを振る舞ってくれたのだ。

全部で二十人足らずだったと思うが、一人でこんなにたくさん釣ったんだ、やっぱりおじさんは違うなあと尊敬した。

   

修験道の人たち

 月山は出羽でわ三山さんざん月山がっさん羽黒山はぐろさん湯殿山ゆどのさん)の一つで、信仰の対象となっている。

修行のために、山伏の格好をした人たちが登ってくる。

昔、漫画で見たことがある山伏だ。
   

   

 私たちの合宿中に、この修験道しゅげんどうの人たちが大勢で小屋を訪れ、泊った。

その間、私たちは2階で過ごした。

階下で彼らが大きな声でおしゃべりしているのが聞こえたが、山形弁なので、全く意味が分からなかった。

山形の人達は山形弁と東京弁を両方話す、ということは、ほとんど二か国語を話すようなものだと思う。

すごいなあと思った。

   

歩荷さん

 ある日、歩荷ぼっかさんと呼ばれる、山に荷揚げをする人が、背負子(しょいこ)に、山小屋のための荷物をたくさん載せて上がってきた。
   

   

私たちはその荷物の大きさに驚いたが、男子たちもそのたくましい力を称賛し、感心していた。

ヒーローだった。
   

世の中に「歩荷」という仕事があることを初めて知った。

   

下山

 思いのほか梅雨が長引き、下山予定の日になっても雨がやまなかったので、合宿が延長された。

食料がだんだんなくなり、ご飯の上にめざし一本、マカロニのマヨネーズえがおかずだった。

   

 下山は、登るより楽に違いないと思っていたが、甘かった。

結構きつい。

吐きそうになるぐらいだった。

   

ようやく下りると、下界はすっかり梅雨が明け、青空の下をトラックの荷台に乗って走って行った。

   

   

さわやかな風を受けながら、あたりの風景を見ると、芽吹いたばかりの落葉松からまつの林が見えた。

落葉松って、こんなに姿のきれいな樹だったんだなあ。

   

こうして、初体験の月山合宿が終わった。

この経験は、スキー部を続けなきゃ、と思うのに十分だった。
   

出羽三山神社 公式サイト
http://www.dewasanzan.jp/publics/index/1/

   

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