イワナっておいしい
雨で練習が休みになった日、男子二人がイワナを釣るんだと言ったので、一緒について行った。
小川の流れる湿地を歩いた。
雪解け水を含んだ、ふわふわの苔の絨毯の上を歩いた。
ところどころに可愛い花が群生している。
霧に包まれ、ファンタジーの世界のようだった。
釣果は二尾だった。
小屋に帰り、囲炉裏で焼いて食べたが、とてもおいしかった。
ところが、その日の夕食に、小屋のおじさんが一人一匹ずつイワナを振る舞ってくれたのだ。
全部で二十人足らずだったと思うが、一人でこんなにたくさん釣ったんだ、やっぱりおじさんは違うなあと尊敬した。
修験道の人たち
月山は出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)の一つで、信仰の対象となっている。
修行のために、山伏の格好をした人たちが登ってくる。
昔、漫画で見たことがある山伏だ。
私たちの合宿中に、この修験道の人たちが大勢で小屋を訪れ、泊った。
その間、私たちは2階で過ごした。
階下で彼らが大きな声でおしゃべりしているのが聞こえたが、山形弁なので、全く意味が分からなかった。
山形の人達は山形弁と東京弁を両方話す、ということは、ほとんど二か国語を話すようなものだと思う。
すごいなあと思った。
歩荷さん
ある日、歩荷さんと呼ばれる、山に荷揚げをする人が、背負子に、山小屋のための荷物をたくさん載せて上がってきた。
私たちはその荷物の大きさに驚いたが、男子たちもその逞しい力を称賛し、感心していた。
ヒーローだった。
世の中に「歩荷」という仕事があることを初めて知った。
下山
思いのほか梅雨が長引き、下山予定の日になっても雨がやまなかったので、合宿が延長された。
食料がだんだんなくなり、ご飯の上にめざし一本、マカロニのマヨネーズ和えがおかずだった。
下山は、登るより楽に違いないと思っていたが、甘かった。
結構きつい。
吐きそうになるぐらいだった。
ようやく下りると、下界はすっかり梅雨が明け、青空の下をトラックの荷台に乗って走って行った。
さわやかな風を受けながら、あたりの風景を見ると、芽吹いたばかりの落葉松の林が見えた。
落葉松って、こんなに姿のきれいな樹だったんだなあ。
こうして、初体験の月山合宿が終わった。
この経験は、スキー部を続けなきゃ、と思うのに十分だった。
出羽三山神社 公式サイト
http://www.dewasanzan.jp/publics/index/1/
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