山小屋の生活と雪渓
営林署の小屋ってどんなところ?
営林署の小屋は2階建てで、かなり広かった。
上下とも畳敷きだった。
下の広間でご飯を食べたり、ミーティングをしたりした。
上で寝た。
電気はなく、アセチレンランプの灯だけだった。
その周りだけが明るく、部屋の隅の方は薄暗かった。
広間の壁ぎわに大きな竈があり、その前には囲炉裏が切ってあった。
今、思い返してみると、いい雰囲気だった。
ご飯はどうしたの?
竈に薪をくべて、特大のお釜でご飯を炊いた。
同期の男子が「俺に任せて」とご飯炊きを一手に引き受けた。
いろいろな特技を持っている人がいるものだ。
台所にはプロパンのガスコンロがあり、おかずはそこで作る。
米や食材は、すべてみんなで担ぎ上げたのだ。
1年と2年がペアになって、食事当番を担った。
体育会というのは、2年生が一番こき使われる。
泣く子も黙る3年生、4年生は神様だった。
が、この合宿に4年生は参加していなかった。
トイレは?
トイレは一つしかなかった。
同期女子の一人が言った。
「みんな同じものを食べてるから、同じ臭いだよね」
雪渓を滑るって、どんな感じ?
7月末の山形は、まだ梅雨の最中で、しとしとと雨が降ることが多かった。
弱い雨の中を、スキーを担いでさらに頂上近くまで登ると、
雪渓(夏でも雪が残っている渓谷)が広がっており、そこが私たちのゲレンデとなった。
他には誰もいない、貸し切り状態だ。
![](https://tamichat.com/wdps/wp-content/uploads/2020/12/bd60b835cdfb1b6015c65655c8eec84f.jpg)
天気がいいと、夏空の下のスキーは爽快だった。
私たち女子は長袖のシャツで滑ったが、
上級生の男子の中には、ランニングで滑ったり、半ズボンに膝までの靴下で滑ったりする人もいた。
雪というより氷に近い。
転ぶとめちゃくちゃ痛くて、みんなお尻に青あざができた。
ところどころ、雪が解けて岩が露出しているところもあった。
天候急変
あるとき、練習中に天候が急変し、急いで下りることになった。
女子から先に下りることになり、その先導を任されたのが同期の男子一人と、
新入生勧誘のときに見かけて「チャラい」と感じた2年生の男子だった。
冷たい風がビュービュー吹き、雪渓の表面から氷の粒のようなものが吹き上がる。
たどたどしくスキーを操りつつ下りる私たちを、辛抱強くサポートする男子が頼もしかった。
誰かのバッケン(靴をスキーに固定するための金具)が外れてしまうと、足元にしゃがんで、それを直した。
また、ある女子が「寒い、寒い!」注 と言って泣き出すと、
例のチャラいと思っていた男子が、イライラせずに自分のヤッケを脱いで着せたりした。
こういう時の振る舞い方で、その人の器が分かると思った。
他にも、いろいろなことがあった。それはまた続きをお楽しみに。
to be continued・・
注 総合南東北病院「健康情報 こんにちわ」2019年12月号
http://www.minamitohoku.or.jp/files/paper/files/0025_file01.pdf
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