第109話 初すべり

tanigawadake 青年期

 
 12月の初めに行う、シーズン最初の合宿を「初すべり」と言っていた。
初すべりは谷川岳の天神平と決まっていた。
   

 いつものように夜行で出発し、未明にあい駅に着く。

ホームにうっすらと雪が積もり、寒いというより痛かった。

暗い中を、駅近くの旅館に行き、仮眠をとる。

やがて夜が明け、動き始めたロープウェイに乗って、天神平へ。
   

 ロープウェイを降りると、すぐそこがゲレンデだ。先に来ていた先輩たちに挨拶して、さっそく着替えて練習に。

   

 宿舎となる天神小屋は、下がコンクリートのたたきで、そこに、かいこ棚が繋がっていた。

かいこ棚というのは、二段ベッドのような形で、ベッドの部分は4畳ぐらいの部屋になっている。部屋の端に小さい棚があって、荷物はそこに置く。
   

布団はもう一方の端に畳んでおいてあったと記憶している。

一部屋に3人収容され、寝起きするのだ。外部とはカーテン一枚で仕切られているだけだった。

   

 食堂には石炭ストーブだったか、薪ストーブだったか覚えていないが、そのストーブだけが暖房だった。エアコンなど、もちろんなかった。

   

今考えると、よくあんな劣悪な環境の中で平気で過ごしたものだなあ、若かったんだと思う。
   

   
 1年目の初すべり、スキー技術よちよち歩きの同期5人娘は、コーチとして参加していたOBや、顧問の先生に、悠長に教わっていた。

ところが、以後、私たちはとんでもないことを聞かされることになる。

 それは、次に。

   

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