第4話 初めてのおつかい

crying girl幼児期

 まだ4歳になる前だったと思う。

父が「たばこ買ってくる」というのを聞いて、自分が行くと言ったのだ。

父は「ほんとに行けるのか?」と心配したが、「ひとりで行けるもん」と自信満々だった。
   

 ふつうは母親が心配すると思うが、うちの場合は父の方が心配し、母は「大丈夫でしょ」と言った。

母は、子どもが包丁などの刃物を使っていても「危ない」と言って止めるような人ではなかった。

   

 お金をもらって意気いき揚々ようようと出発した。

無事にタバコ屋さんまでたどり着き、たばこを買って店のおばさんに褒められ、さあ帰ろうと歩き始めた。

しばらく歩いたところで、ふと「あれ? おかしいな」と辺りを見まわした。見たことのない風景が見えたのだ。

   

動転して走って引き返し、お店の前まで来てワーッと泣き出した。

お店のおばさんは驚いて「あらあらどうしたの?」と聞いたが何も言えず、ただ恐ろしくなって泣き続けた。

「おうちはどこ?」と聞かれたが、私はもう、なにがなんだかわからなくなっていた。

   

 「こっちの方から来たよね」とおばさんが私を連れて少し歩き始めたところに、父と、妹を抱っこした母が、ニコニコ笑いながら迎えに来たのだ。

「なかなか帰ってこないから、どうしたのかと思って迎えに来たのよ」と、私の気持ちとは裏腹に、呑気のんきなものだった。
   

要するに、来た方向とは逆の方向に向かって歩いてしまったのだ。

私は今でも、こういう間違いをしょっちゅうする。初めてのおつかいは、初の方向音痴体験だった。

   

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