第52話 あれれ?のクリスマス

Christmas party 学童期(東京編)

    
   
 引っ越しをした年のクリスマス。

母がクリスマスパーティーをしようと言った。
   

部屋はさほど広くなく、大きなツリーを置く場所がない。

かといって、サイドテーブルの上に置けるような小さなツリーでは、おもしろくない。
   

そこで母は、妹や私と一緒に、天井や、壁と天井の境目などに、オーナメントやキラキラのテープやらを、たくさん飾りつけた。

母はとても生き生きしていた。

   

たぶん、父の実家にいるときには、こんなことは到底できなかったので、自由に自分の好きなようにできることが嬉しかったのだろう、と今思う。
   

私は、気難しい父が、これを嫌がるのではないかと少し心配していたが、思いのほか喜んでいたのが印象に残っている。

   
   

 パーティーのメニューはどうしようかと考えたり、誰を呼ぼうかと考えたり、その準備をするのがとても楽しかった。

当時まだ珍しかった、アイスクリームでできたデコレーションケーキを注文することになったとき、嬉しくてワクワクした。
   

部屋の端っこにカーテンで仕切れる場所があり、そこを舞台に見立て、何をしようか歌を歌おうか劇をしようか、なども考えた。

早くから準備をしたので、クリスマスが来るのが待ち遠しくてたまらなかった。   

   

クリスマスの準備

   

 いよいよその日がやってきた。

近所の友達や、そのお母さんや兄弟などを呼びパーティーをしたのだが、思ったよりはあっけなく終わった。

アイスクリームのデコレーションケーキも、期待したほどおいしくはなかった。
   

あれ? 

どうしてだろう。

あんなに楽しみだったのに。
   

もしかすると楽しさというものは、そのこと自体の楽しさよりも、それが来るまでワクワク待つところにあるのかもしれない。

   

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