引っ越しをした年のクリスマス。
母がクリスマスパーティーをしようと言った。
部屋はさほど広くなく、大きなツリーを置く場所がない。
かといって、サイドテーブルの上に置けるような小さなツリーでは、おもしろくない。
そこで母は、妹や私と一緒に、天井や、壁と天井の境目などに、オーナメントやキラキラのテープやらを、たくさん飾りつけた。
母はとても生き生きしていた。
たぶん、父の実家にいるときには、こんなことは到底できなかったので、自由に自分の好きなようにできることが嬉しかったのだろう、と今思う。
私は、気難しい父が、これを嫌がるのではないかと少し心配していたが、思いのほか喜んでいたのが印象に残っている。
パーティーのメニューはどうしようかと考えたり、誰を呼ぼうかと考えたり、その準備をするのがとても楽しかった。
当時まだ珍しかった、アイスクリームでできたデコレーションケーキを注文することになったとき、嬉しくてワクワクした。
部屋の端っこにカーテンで仕切れる場所があり、そこを舞台に見立て、何をしようか歌を歌おうか劇をしようか、なども考えた。
早くから準備をしたので、クリスマスが来るのが待ち遠しくてたまらなかった。
いよいよその日がやってきた。
近所の友達や、そのお母さんや兄弟などを呼びパーティーをしたのだが、思ったよりはあっけなく終わった。
アイスクリームのデコレーションケーキも、期待したほどおいしくはなかった。
あれ?
どうしてだろう。
あんなに楽しみだったのに。
もしかすると楽しさというものは、そのこと自体の楽しさよりも、それが来るまでワクワク待つところにあるのかもしれない。
コメント