第49話 時計屋さんのKちゃん

movement 学童期(東京編)

   
 同じクラスにKちゃんという友だちがいた。

みんなが分かることが分からなかったり、みんなと同じことができなかったりする女の子だった。

ふだんはいろいろな場面で、ややみそっかすのような存在だった。

   

 Kちゃんのうちは時計屋さんだった。

あるとき先生は、時計について勉強するということで、Kちゃんのお兄さんを講師として招いて授業を行った。   

いろいろな時計の仕組みなどを分かりやすく説明してくれて、面白い授業だった。
   

お兄さんがみんなに何か質問をした。

すると、Kちゃんが手をげて答えたのだ。

みんなはおどろきとよろこびで拍手はくしゅをした。

「さすがー、時計屋の娘だぞー」と男の子が大きな声で称賛しょうさんした。

この日はKちゃんがかがやいて見え、主役だった。

   

 当時はクラスに、大多数の子どもたちとは違っている、様々な個性を持つ友だちがいた。

私もその一人かもしれないが。

お互いにその個性を分かりあって、一緒に学校生活を送ることが、何の不自由も不都合もなく、ごく当たり前で自然なことだった。

今は、みな同じようでないと外されてしまいがちで、生きづらくなっているようなのだが、それは残念なことである。

   

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