第80話 修学旅行

tenryuji思春期

 修学旅行は、お決まりの奈良・京都であった。

事前学習がやたらとあり、見学する寺社のことや仏像、歴史的建造物などについていろいろとお勉強したが、長い説明を聞くのが苦手な私は、いい加減にしか聞いていなかった。

   

 最近は修学旅行もデラックスで、飛行機で往復したりするらしいが、そのころ、新幹線は、まだなかったし、特急で行ったのかというと、いやそうじゃなかった。

急行列車で京都まで行き、そこからバスで奈良へ行った。旅館に着いてすぐ寝る感じだった。引率した先生方も、さぞお疲れだっただろう。

   

 奈良の大仏は、関西にいた小学1年生の時に行ったことがある。

その時はどれが大仏なのか、わからなかった。たぶん大仏の台座のあたりしか見えていなかったのだろう。今回はちゃんと見た。
   

唐招とうしょう提寺だいじのたたずまいは、いいなあと思った。

奈良のひなびた道を歩くのも楽しかった。

京都ではずいぶんたくさんのお寺や神社を見学したが、好きだったのは、天龍寺、三千院、寂光じゃっこう院だ。

   
   

平等院鳳凰堂

   

先生が、平等院の鳳凰堂を眺めて「昔の人はあれを見て、ほんとうに極楽を見るような気がしただろうなあ」と言っていたが、全く共感できなかった。

それを味わうのは、中学生にはまだ早かったのかもしれない。

   

 修学旅行と言えば、友だちとおしゃべりしたり、好感を持っている男子が、どの女子を気にしているのかを気にしたりと、そっちのほうが忙しいものだ。
   

 そんなある夜、全クラスの女子をいくつかのグループに分けて夕食をとった。

話のテーマは、やはり恋バナ(恋の話)となった。私はどちらかというと奥手で、もっぱら聞き役だった。
   

おしゃべり

   
その時、隣のクラスの女子が言った。

「好きだと思ったら、自分から好きだってことを伝えなきゃだめよ」と。

「えっ?」と思った。

「その人が自分のことを好きかどうかも分からないのに、そんなこと言ったら嫌がられるんじゃない?」と言うと……

「そんなことないのよ。男の人は、その人が好きだということより、好かれていることが好きなんだから、好きだって言えば絶対に喜ぶのよ」と。

   

へえ、そういうものなのか、と内心驚いた。私と同い年なのに、男の人の気持ちをよく知っているんだなあ、ませているなあ。

ただその人を想い、向こうから働きかけてくるのを待っていても、想いは叶わないと教えられた時だった。

   

 最後の晩に、友だちとお土産を買いに街へ出て、扇子屋さんに立ち寄った。

そこには、「Goodbye Jimmy, Goodbye」が流れていた。いい歌だなあと思って聞いていた。
   

Goodbye Jimmy, Goodbye – Kathy Linden キャシー・リンデン

   

   

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