怖いものランキングとして「じしん・かみなり・かじ・おやじ」は有名だが、子どもには一人一人、その子の怖いものがあるものだ。
私の場合、山猫、山犬、コンドルだった。
母の里の周辺はそこここに、まだ自然がそのまま残っているようなところだった。
夜になると山犬が出るよ、などと大人たちが脅かす。
山犬というものが、どのようなものなのか知らなかったが、とにかく怖いんだろうと思っていた。
たしかに、夜になると遠くの方から「ウォ~ン」という遠吠えが聞こえてくる。
きっとあれは山犬だろうと思った。
山犬は普通の犬より高く跳び上がれるから、2階の窓まで届くかもしれないよ、などとも脅された。
ほんとに怖かった。
そして、山猫。
これは、友だちが学校で噂していた。
夜、道を歩いていると、家の塀の上から山猫がとびかかってきたというものだ。
それも恐ろしい。
夜、母と道を歩くとき、左右の家の塀の上を確認しながら「大丈夫?」と言いつつ歩いた。
母は面白がって「とびかかってくるかもしれないよ」などとからかった。
コンドルは、そのころ読んだアラビアンナイトの漫画、シンドバッドの冒険に出てきた。
羊などを足でつかんで飛んでいく。
獰猛な鳥として描かれていた。
コンドルは南アメリカの方にすんでいるらしいが、もしかすると日本まで飛んでくるのではないか。
それが心配でならなかった。
母に「コンドルが日本まで飛んでくると思う?」と聞いたりした。
母は「どうかね」と関心なさそうに返事した。
一人で「飛んで来たらどうしよう」と胸を痛めていた。
私はそのころ音も怖がった。
妹が風船を胸に抱いて、手でギューッと押さえたりする。
「パーン!」と割れるのではないかと、ビクビクした。
どうして小さい子は、平気でああいうことをするんだろうと思った。
ここまで書いてきたようなことは、今では何とも思わない。
大人になると、怖いものが減るんだなあ。
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