第2話 おもちゃのピアノ

toy piano 幼児期

   
 すぐ隣にM子ちゃんという女の子が住んでいた。

私より3つか4つ上で、 とても賢くて勉強ができるということで有名だった。

M子ちゃんは時々私のところに遊びに来ていた。

   

 私はおもちゃのピアノを持っていた。

父の親友でバイオリンが上手なおじさんがいたのだが、そのおじさんがプレゼントしてくれたものだった。

グランドピアノの形をしていて、おもちゃなりにも音がちゃんと出て、

母に、簡単な「さいたさいた」などのメロディーの弾き方を教えてもらい、よく遊んでいた。

   

 あるとき、遊びに来たM子ちゃんが、このピアノの中がどうなっているのか見たくないか? と私に尋ねた。

私は面白そうだと思って同意した。

   

M子ちゃんはきりのようなものを持ってきて、ふたをこじ開けようとしたが、うまくいかず、

しまいに錐であちこちに穴をあけ、さんざん叩いたり、突いたりして、そのピアノをめちゃくちゃにしてしまい、

あげく帰ってしまった。

   

母はそのめちゃくちゃになったピアノを見てびっくりして「どうしたの?」と聞いたので、

ことの成り行きを伝えると、憤慨ふんがいした顔をしたが、それ以上のことは何もなかった。

   

 M子ちゃんは、どうしてこんなひどいことをしたんだろう。

今は分かる気がする。

M子ちゃんは、このおもちゃのピアノがうらやましかったに違いない。

   

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