第71話 ワシントンハイツ

Yoyogi National Stadium 思春期

 
 そのころ、代々木にワシントンハイツなるものがあった。

小田急線の参宮橋辺りから見えるそれは、米軍の家族宿舎や兵舎だった。
   

ユネスコ班

 中学のとき、私は部活らしい部活をせず、面白そうだと思うとちょっと入って、めんどくさくなるとすぐやめる、を繰り返していた。

今そんなことは許されないと思うが。

   

 いろいろな部活の中に、「ユネスコ班」というものがあった。

ESSのような部で、英会話の練習をしたりしていたらしい。

この班で映画を見に行くという噂が聞こえ、面白そうだと思って入った。
   

実話をもとにした「5つの銅貨」という映画で、ダニー・ケイ主演だった。

面白かったし、その挿入歌の「5つの銅貨」もかわいい歌で、覚えてよく歌った。
   

   

ワシントンハイツへ行く

 それだけでなく、ワシントンハイツの中にある中学校で、そこの子どもたちと一緒に授業を受けるというイベントもあったのだ。

これにも参加してみた。

   

 初め、図工のような授業を見学した。

「What are you doing?」などと質問してみると、親切に教えてくれた。

半分ぐらいしかわからなかったが……。

   

ある生徒が、先生の後ろをすり抜けようとして何かを落とした。

先生が何か言って注意すると、その生徒は言い訳らしいことを言っていた。

すると先生は厳しい顔で、よくわからないが言い訳するなみたいなことを言った。

その子は「Sorry」と謝っていた。

アメリカの先生は厳しいなあと思った。

   
   

 次に歴史のような授業を一緒に受けたが、さっぱりわからなかった。

驚いたのは、教科書が後ろの棚にあり、みんなそこからとっていたことだ。

家に教科書を持ち帰らないんだなと思った。

しかもその教科書が大きくて分厚かった。これじゃ持ち運びできないよな、と思った。

   

代々木公園 オリンピック記念の宿舎
代々木公園 オリンピック記念の宿舎

   

 最後は体育だった、といってもボールを使ったゲームみたいなものだった。

細かいことは忘れたが、2チームに分かれて、それぞれ自分の番号が決まる。

誰かが蹴ったボールが自分の方に来ると、自分の番号を言ってそれを蹴り返すというゲームだった。

   

私の番号は「3」だった。

「three」は発音が難しい。嫌だなと思ったが、頑張って発音してボールを蹴った。

この授業だけが理解できた。

   

 帰る時、友だちと「○○が可愛かった」とか「○○が好き」とか言い合った。

短い間にも、そのアメリカンスクールの子どもたちの名前をおぼえて感想を言い合ったのだ。

   

 ワシントンハイツは後に、東京オリンピックの選手村や国立代々木競技場、代々木公園、国立オリンピック記念青少年総合センター、NHK放送センターなどとなった。

今思うと、米軍家族は広くてきれいなところに住んでいたのだ。

   

コメント

  1. 夢 みるこ より:

    はじめまして。
    懐かしい話題だったので思わずコメントを書いています。
    私はワシントンハイツに近い中学に通っていました。
    あの前を通って学校から渋谷まで歩いて映画館にいきました。
    「喜びも悲しみも幾年月」です。ワシントンハイツの中は
    憧れでしたが門の前にはピストルを下げたSPが警備してましたよね。
    もう、あの場所からは引っ越されたのでしょうね。
    私は70年間、住み続けています。国立競技場は旧・旧・新と、
    3競技場を見ています。
    書き出すと限がありません。
    実は「パパは何でも知っている」のパパのジャケットの肘当てが
    付いてたのも新鮮な気持ちで見ていました。
    長々と失礼しました。
    ノスタルジックな話を楽しみにしていますね。

    • tamichat より:

      夢 みるこさま

      はじめまして。
      人気ブロガーの方からコメントいただき、光栄です。
      うれしく拝見しました。
      とてもよいところにお住まいなのですね。羨ましいです。
      私は小田急線をよく使っておりましたので、
      電車の窓から参宮橋辺りを眺めておりました。
      住まいは、ほどほどに小田原方面へ下った所でございます。
      同じ記憶を共有してくださる方がいらして、感激しました。
      これからもよろしくお願いいたします。

      • tamichat より:

        夢 みるこさま

        (追記)
         昨日アクセスが急増してびっくりしたのですが、
         あの記事に貼ってくださったリンクからだったのですね。
         ご紹介までしてくださり、ありがとうございます。
         たくさんの方々にお立ち寄りいただいて嬉しかったです。
         予期せぬ贈り物でした。感謝です。

        • 夢 みるこ より:

          無断でリンクを貼ってゴメンナサイね。
          同じ年代の方が読んだら懐かしくて
          ホッコリするのを知らない方にも
          読んで頂きたかったのです。
          ね、みなさん「そうだよね~・そうだったよな~」
          って思っているはずですよ。

          • tamichat より:

            夢 みるこさま

            ごめんなさいなんて、とんでもないです。
            とても励みになっています。
            みるこさんの華やかなブログには及びませんが、
            息長く続けられたらと思っております🙂

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