第20話 昭和天皇と日の丸

hinomaru 学童期(関西編)

   
 私たちの学校に、天皇陛下がいらっしゃることになった。

「へえ~、すごい」と思った。
   

学校は、私たちに日の丸の旗を作るよう命じた。

材料を渡され、家で作ってくるように言われた。

   

 これが簡単そうで、簡単ではなかった。

半紙に丸を描いて、絵具だったのかクレパスだったのか、その辺は忘れてしまったが、塗ればいいだけの話だから、すぐできそうである。

ところがなんか変な形になってしまう。

母に訴えたが、あまり興味がなさそうだった。

母も少し変わっていたかもしれない。

   

やっと日の丸を描いても、これを割りばしのような芯棒にのり付けするのが一苦労であった。

くっついたと思っても、すぐはがれてしまう。

さんざん苦労して作った、できそこないの日の丸の旗を持って、当日を迎えた。

   

 住んでいた兵庫県の地域は、山に向かって坂になっており、その坂道に沿って家が建っていたり、学校が建っていたりした。

学校の正門は、そこを右に入って上がって行ったところにあった。
   

その正門のあたりから運動場に向かって、私たちは日の丸の旗を手に持ち、並ばされた。

天皇陛下がお通りになるときに、旗を振るように言われていた。

   

 果たして、なにかが通過したような気がする。

みんなが旗を振ったので私も振ったが、例によって、左右の友達がどのように振るのか見ながら振っているうちに、あっという間に終わってしまった。
   

どれが天皇陛下の車だったのだろう。

天皇陛下は私たちの学校に、なんの御用があったのだろう。

なにもわからないうちに終わってしまった。

   

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