番外編10 不機嫌になっちゃう、なぜ?

Grumpy girl 番外編

    
 学生時代、夏山でのスキー合宿を終えての帰り、上野に向かう汽車の中で同期の男子と話していた。

「楽しかったなあ」

「これでうちに帰ると途端に機嫌悪くならない?」

「なるなる。それでご飯のおかずが気に入らなかったら、もう最悪だよな」
   

この件で意気投合できる人が身近にいたんだ。

   

 私は小さいときから場面の転換にすばやく順応することができず、すぐ泣いたり、ぐずったりしていた。

叔母の結婚式の時もそうだった。
   

   

 また、本に読みふけっていて不意に夕飯に呼ばれると、行くには行くが、泣きながら食べる。

周りの大人たちは

「どうしたんだろうね」

「きっと本が可哀そうな話だったんじゃない?」

と勝手な結論を出していた。

違うんだけど、説明できなかった。

   

 映画「菩提樹」を見た後もそうだった。
   

   

その世界に浸っていて、すぐには日常に戻れない。

しかし、みなはれとした顔で「さあ、なんか食べよう」と言っている。
   

えらく不機嫌になってしまった私を見て、

やはり周りの大人は、

「映画館の空気が悪かったから、頭が痛くなったんじゃないの?」

といいかげんな結論を出していた。

   

 そんなある日、テレビで赤毛のアンのアニメを見ていたときのことだ。

アンと友だちはお芝居か何かを見て、とても楽しかったはずなのに、なぜか気持ちが沈んでしまう。

そのとき一緒だったおばあさんだったかが

「若いころはみんなそんなもんよ。アイスクリームでも食べればすぐ治るわ」と言ったのだ。
   

アイスクリームを食べる女の子

   

私だけじゃないんだ。

私のこの、自分の感情をうまくコントロールできずに不機嫌になったり、

泣いたり怒ったりするのを、

まわりの大人で理解してくれた人は全然いなかった。

なんとなく気難しくて、かわいくない子どもという扱いになっていた。
   

自分の性格が悪いのだと思っていたのだが、

いや、そうではないんだとわかり、うれしかった。

   

 こんな子どもは、きっとどこにでもいると思う。

そんなとき、泣いたり怒ったりするのをしかったりせずに、気持ちが戻るのをそっと待ってあげつつ、

それこそアイスクリームでも食べさせてあげればいいと思う。
   

 大人になると、こういうことはだんだんなくなって、

今ではスムーズにもとの世界に戻って行けるようになった。

不思議なものだ。

   

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