「おーーたっからづかー、・・・・」注1 とラジオから歌が聞こえる。
「すみれのはーなー、さくーころー」注2
母の妹は、宝塚の大ファンだった。
宝塚は、母の里の家から阪急電車で比較的近くだった。
母に連れられて、宝塚を観に行ったことがある。
私が小学校1年生ぐらいだから、昭和27年ごろだと思う。
演目はたしか「源氏物語」だった。
そのほかに覚えているのは、寸劇のようなものだったと思うが、「トウランドット姫」という人が乗ったゴンドラが、舞台の端から滑り出てきたことだ。
そのときの歌がなぜか「ホフマンの舟歌」だった。
その優雅なメロディーとともにゴンドラが滑っていくのが、とても興味深く、きれいだなあと思った。
源氏物語は話の筋がよくわからなかったが、「葵の上」とか「夕顔」などの名前が出てきた。
「葵の上」が病気で寝ている場面を覚えている。
舞台の最後はフィナーレで、音楽、衣装、ダンス、とてもきらびやかだった。
母は、けっこう興奮していた。
「源氏物語」に出てきた「むらさきのー・・・」という歌が耳に残り、家の庭の境目にある低い塀にまたがって、一人で歌っていた。
たぶん、「紫の上」のことを歌った歌だったのだろう。
宝塚スターの名前で憶えているのは、筑紫まりだ。
母の妹が、筑紫まりのファンだったのだと思う。
パンフレットのようなものや、筑紫まりの写真が載っている雑誌などをよく目にした。
たしか、そのころ宝塚大劇場のあったところには、遊園地や動物園もあったように記憶している。
今はどうなっているのだろう。
後に中学生になったとき、東京にも宝塚があることを知り、驚いた。
友だちの中に宝塚ファンがいて、その当時はテーリーこと明石照子、マッちゃんこと寿美花代がスターだった。
注1「おゝ宝塚」 作詞 白井鐡造
注2「すみれの花咲く頃」 日本語詞 白井鐵造
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