第30話 ライムライト

Charles Chaplin学童期(関西編)

 母は映画がたいそう好きだった。

それで、小さい私を連れてよく映画を見に行ったものだ。
   

 一番古い記憶にある映画は、家族みんなと叔父夫婦も一緒に見た、兵隊さんが出てくる映画だった。日本兵のかぶっている帽子のイメージだけを覚えている。

のちに母に確かめると、「きけ、わだつみの声」の映画だったということだ。

   

 次がディズニーの「白雪姫」

見ながら母が何回も「かわいいわね」「すてきね」というような表情で、私の方を見たことを覚えている。

「ハイホー、ハイホー」と歌いながら小人たちが歩いて行くところなど、心が躍るようだった。

   

 さらに「バンビ」

バンビ

   

バンビが生まれてよろよろと立ち上がり、辺りを見回す。

初めに覚えた言葉が「bird」で、ちょうちょを見ても「bird!」というところのかわいらしいシーンが印象に残っているが、最終的にこれは怖い映画として記憶に残っている。

森が火事になり、その中を動物たちが逃げ惑うシーンが恐ろしくて、強烈に目にやきついてしまったからだ。

   

 小学校に上がると、母は自分が見たい映画に私を連れて行ったので、もっぱら大人の映画をたくさん見た。

「雨に唄えば」「素晴らしき哉、人生!」「パンと恋と夢」「三つの恋の物語」「赤い靴」「地上最大のショウ」「バンド・ワゴン」「バリ島珍道中」……

思い返せば、みな名画だ。
   

空中ブランコ

   
 特に「三つの恋の物語」は、不思議にストーリーもよく覚えている。オムニバス形式の映画だった。

モイラ・シアラーがバレリーナ役で出ていたり、あのジェームズ・ディーンの恋人だったピア・アンジェリと、カーク・ダグラスが空中ブランコをする役で出ていたり、ぜいたくな映画だったのだ。

   

 しかしなんといっても「ライムライト」である。

昔、映画は途中からでも入って、立ち見で終わりまで見て、入れ替えで座ってまた初めから見るという見方をよくしていた。
   

「ライムライト」を見た時も前の方から入り、まず目に入ったシーンが、男性と女性がコーヒーを飲んでいるところだった。
   

そしておしゃべりに夢中になっている時に、女性がふと立ち上がり歩く。

すると男性が「歩いてるよ」

女性も「私、歩いてるわ」と喜ぶのだ。
   

後でわかるのだが、女性はガス自殺を図り、男性に助けられたが、心理的な理由で歩けなくなっていた。

ところが男性と夢中になっておしゃべりしているうちに、無意識に歩いたのだった。男性はもちろんチャップリンだ。
   

バレリーナ

   
 子どもだったので克明には覚えていないが、女性テリーがバレリーナとして復活して、舞台の袖から中央に向かって美しく舞い出ていくシーン、最後にピエロ役のチャップリンが、おどけながらオーケストラボックスに転落するところ、などが思い出される。

この最後のシーンで母は涙を流していたが、そのころは意味が分からなかった。

   

 そしてなによりも耳に残ったあの素晴らしいテーマミュージック、「テリーのテーマ」

ドラマティックで感動的なメロディー。

すっかり覚えてしまって口ずさんでいると、母が「あれはチャップリンが作曲したのよ」と教えてくれた。

チャップリンはバイオリンも弾くし、作曲もするのだと。

へぇー! すごいなあ、チャップリン。

主演・監督の上に作曲までするなんて、と感激したものだ。

   

大人になってから、あの「Smile」も彼の作曲だと知った。

チャップリンの人格全体の中にある人への優しさ、繊細さ、音楽的感性、ほんとに素敵だと思う。

   

ライムライト

   

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