思い出してみると、今までに代返(授業の出欠確認の返事を代わりにしてもらうこと)を頼んだ記憶はない。
しかし、それよりずっと罪が重そうな「代テスト」の経験がある。
高校2年生あたりから、仲良し4人組で行動することが多くなった。
そのうちの一人は私と同じ、映画大好き人間だ。
彼女は普段から団体行動が大嫌いで、遠足とか社会科見学とか、集団で行動しなければならないものには一切参加しない。
修学旅行も、最後だからとみんなで誘ったが、「やっぱり行かないわ」と行かなかった。
個性的な人で誤解されがちだったが、私は大好きだった。
ある日、最後の時間に古文の小テストをするというので、
「え~? めんどくさーい」
映画大好きの友だちと私は、放課後、映画を見に行くことにしていたので余計に拒絶反応が起きた。
二人は、4人組の残りの二人に
「あたしたちの分も書いといてくれる?」と頼むと、快く引き受けてくれたので、さっさと映画を見に行った。
バレるに決まっているのにねえ。
後日、この事実は当然バレた。
4人は担任に呼び出され、こんこんと説教された。
2時間ぐらいだったか、ずっと立ちっぱなしで。
もちろん先生は座っていた。
ちなみに、この先生は学校でただ一人の女性教師で、家庭科の先生だった。
小うるさいことで有名だった。
何を言われたのか全く思い出せないが、一つだけ覚えていることがある。
「あなた達、お小遣いはいくらもらっているの?」と聞かれたことだ。
そのとき、一人の友だちが、
「わたくしは、月に1,975円いただいています」
と明るく可愛い声で答えたのが、おかしくて笑いをこらえるのが大変だった。
その後、親たちも呼び出された。
学校は休みだったが、私たち4人と各々の母親で登校した。
親たちが別室で先生と話している間、私たちは隣の教室で雑談していた。
終わったらしく、古文の先生が、うなだれて廊下を歩いて行くのが窓越しに見えたとき、ちょっと可哀そうなことをしてしまったなと思った。
さぞかし面目丸つぶれだっただろうと思ったからだ。
先生、ごめんなさい。
帰りにみんなでパーラーによって、お茶をした。
みんな、親から何も言われなかったし、これが4人の距離をさらに縮めた。
決して褒められたことではないが、面白い経験だった。
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