第94話 代返ならぬ代テスト

Female student scolded 思春期

   
 思い出してみると、今までに代返(授業の出欠確認の返事を代わりにしてもらうこと)を頼んだ記憶はない。

しかし、それよりずっと罪が重そうな「代テスト」の経験がある。

   

 高校2年生あたりから、仲良し4人組で行動することが多くなった。

そのうちの一人は私と同じ、映画大好き人間だ。

彼女は普段から団体行動が大嫌いで、遠足とか社会科見学とか、集団で行動しなければならないものには一切参加しない。
   

修学旅行も、最後だからとみんなで誘ったが、「やっぱり行かないわ」と行かなかった。

個性的な人で誤解されがちだったが、私は大好きだった。

   

 ある日、最後の時間に古文の小テストをするというので、

「え~? めんどくさーい」

映画大好きの友だちと私は、放課後、映画を見に行くことにしていたので余計に拒絶反応が起きた。
   

二人は、4人組の残りの二人に

「あたしたちの分も書いといてくれる?」と頼むと、快く引き受けてくれたので、さっさと映画を見に行った。

バレるに決まっているのにねえ。

   
   

 後日、この事実は当然バレた。

4人は担任に呼び出され、こんこんと説教された。

2時間ぐらいだったか、ずっと立ちっぱなしで。
   

叱る女性教師

   
もちろん先生は座っていた。

ちなみに、この先生は学校でただ一人の女性教師で、家庭科の先生だった。

小うるさいことで有名だった。

   

 何を言われたのか全く思い出せないが、一つだけ覚えていることがある。

「あなた達、お小遣いはいくらもらっているの?」と聞かれたことだ。

そのとき、一人の友だちが、

「わたくしは、月に1,975円いただいています」

と明るく可愛い声で答えたのが、おかしくて笑いをこらえるのが大変だった。

   

 その後、親たちも呼び出された。

学校は休みだったが、私たち4人と各々の母親で登校した。

親たちが別室で先生と話している間、私たちは隣の教室で雑談していた。
   

終わったらしく、古文の先生が、うなだれて廊下を歩いて行くのが窓越しに見えたとき、ちょっと可哀そうなことをしてしまったなと思った。

さぞかし面目丸つぶれだっただろうと思ったからだ。

先生、ごめんなさい。

   

 帰りにみんなでパーラーによって、お茶をした。

みんな、親から何も言われなかったし、これが4人の距離をさらに縮めた。

決して褒められたことではないが、面白い経験だった。

   

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