「鬼滅の刃」がブームになっている。
が、私は全く興味がわかない。
どうしてだろう。
絵を見ても
歌を聞いても
話の中身の端々を耳にしても
大勢の人が感動しているのをテレビなどで見ても、特に心が動かないのだが、これは私がおかしいのか。
子どもの頃、大好きだった漫画は、山根一二三の「猿飛佐助」とか、上田としこの「フイチンさん」だ。
「猿飛佐助」は小学校2年生ぐらいだったと思うが、友だちの家にこの本があり、読みふけった。
真田幸村や霧隠才蔵などの名前を知り、忍者という魅力的な存在に夢中になった。
そして、山根一二三の絵はユーモラスで楽しかった。
フイチンさんは少女雑誌に連載されていて、毎月楽しみにしていた。
単行本も出たと思う。
絵が可愛くて、とても面白かった。
当時はフイチンさんが中国の女の子だと思っていたが、今考えてみると
服装などがチャイナドレスのようでもあり、ベトナムのアオザイのようでもある。
子どもの目からは、そのエキゾチックなイメージも楽しかった。
そういえば、早見利一の「てるてる姫」という漫画もあった。
てるてる姫というお姫様が、お城の庭で鞠つきをしていると、鞠がポンポン弾んで外に出てしまい、
それを追いかけてお城の外の世界を楽しむというような話だった。
おもしろくて、繰り返し読んだ。
「にんじん」とか「若草物語」などの名作も、初めは漫画でお目にかかった。
そんなとき手塚治虫の「リボンの騎士」に出会い、それ以来、手塚治虫は別格だ。
中学生になり、しばらく漫画から離れていたが、大学生のときは「少年サンデー」の「おそ松くん」を愛していた。
おそ松くんに出てくる「べし」というカエルや、「ニャロメ」という猫のキャラクターのセリフが絶妙で、大好きだった。
また、家庭教師をしていた男の子の影響で「ガロ」というものにお目にかかり
そこから白土三平の「カムイ伝」「カムイ外伝」などに夢中になり、
さらに「COM」から「火の鳥」へと突き進んだ。
20代のときは、「巨人の星」や「あしたのジョー」が国民的関心事になっていたが、さほど影響されなかった。
それらが掲載されていた「週刊少年マガジン」は夫の愛読書であったが、
むしろ松本零士の「男おいどん」のほうが興味をそそられた。
押し入れに突っ込んである、洗濯してないパンツの山に生えた、不潔極まりない「サルマタケ」などが印象に残っている。
だんだん大人の漫画を読むようになり、30代は、「ビッグコミック」と「ビッグコックオリジナル」を愛読していた。
楳図かずおの「イアラ」という短編漫画集にも惹かれたが、これを読んだのは、もう40代の頃だった。
「イアラ」の中の一遍で「ほくろ」というものがあった。
さえない風貌の男の顔に大きなほくろがある。
なにかの理由で追われて、切羽詰まってほくろに思い切り神経を集中して振り返ると、
なんと、顔が引き締まり別人のごとくハンサムになる。
これに味を占め、ほくろに全神経を集中してキャバクラなどに行っては大モテし、
二つの顔を使い分けて、楽しい人生が送れそうだったのだが、
それがどんでん返しになるという、かなり秀逸な漫画だった。
これらのものは面白いが、ドギツサもあった。
子どもにはあまり見せたくないなと思い、隠しておいたのだが、
いつのまにか子どもが見つけて読んでいたのを知り、あわてたこともある。
大人の漫画には、刺激の強い描写があったり、ちょっと人目を避けて読んだ方がいいかなというものもあった。
こうしてみると、子どもの時から実に様々な漫画を読んできたが、「どの作家を一番に挙げる?」と聞かれたら、
難しいところだが、私は手塚治虫と答えたい。
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