昭和こぼれ話3 漫画

ninja and Japanese princess 昭和こぼれ話

    
 「鬼滅きめつやいば」がブームになっている。

が、私は全く興味がわかない。

どうしてだろう。
   

絵を見ても

歌を聞いても

話の中身の端々を耳にしても

大勢の人が感動しているのをテレビなどで見ても、特に心が動かないのだが、これは私がおかしいのか。

   

 子どもの頃、大好きだった漫画は、山根一二三の「猿飛佐助」とか、上田としこの「フイチンさん」だ。
   

「猿飛佐助」は小学校2年生ぐらいだったと思うが、友だちの家にこの本があり、読みふけった。

真田幸村や霧隠才蔵などの名前を知り、忍者という魅力的な存在に夢中になった。

そして、山根一二三の絵はユーモラスで楽しかった。

   

 フイチンさんは少女雑誌に連載されていて、毎月楽しみにしていた。

単行本も出たと思う。

絵が可愛くて、とても面白かった。

 
 当時はフイチンさんが中国の女の子だと思っていたが、今考えてみると

服装などがチャイナドレスのようでもあり、ベトナムのアオザイのようでもある。

子どもの目からは、そのエキゾチックなイメージも楽しかった。

   

 そういえば、早見利一の「てるてる姫」という漫画もあった。

てるてる姫というお姫様が、お城の庭でまりつきをしていると、鞠がポンポンはずんで外に出てしまい、

それを追いかけてお城の外の世界を楽しむというような話だった。

おもしろくて、繰り返し読んだ。

   

 「にんじん」とか「若草物語」などの名作も、初めは漫画でお目にかかった。

   

そんなとき手塚治虫の「リボンの騎士」に出会い、それ以来、手塚治虫は別格だ。

   

   
 中学生になり、しばらく漫画から離れていたが、大学生のときは「少年サンデー」の「おそ松くん」を愛していた。

おそ松くんに出てくる「べし」というカエルや、「ニャロメ」という猫のキャラクターのセリフが絶妙で、大好きだった。

   

   
 また、家庭教師をしていた男の子の影響で「ガロ」というものにお目にかかり

そこから白土しらと三平の「カムイ伝」「カムイ外伝」などに夢中になり、

さらに「COM」から「火の鳥」へと突き進んだ。

   
 20代のときは、「巨人の星」や「あしたのジョー」が国民的関心事になっていたが、さほど影響されなかった。

それらが掲載されていた「週刊少年マガジン」は夫の愛読書であったが、

むしろ松本零士れいじの「男おいどん」のほうが興味をそそられた。

押し入れに突っ込んである、洗濯してないパンツの山に生えた、不潔極まりない「サルマタケ」などが印象に残っている。

    

 だんだん大人の漫画を読むようになり、30代は、「ビッグコミック」と「ビッグコックオリジナル」を愛読していた。

   

 楳図うめずかずおの「イアラ」という短編漫画集にも惹かれたが、これを読んだのは、もう40代の頃だった。

「イアラ」の中の一遍で「ほくろ」というものがあった。

さえない風貌の男の顔に大きなほくろがある。

なにかの理由で追われて、切羽詰まってほくろに思い切り神経を集中して振り返ると、

なんと、顔が引き締まり別人のごとくハンサムになる。
   

これに味を占め、ほくろに全神経を集中してキャバクラなどに行っては大モテし、

二つの顔を使い分けて、楽しい人生が送れそうだったのだが、

それがどんでん返しになるという、かなり秀逸な漫画だった。

   

 これらのものは面白いが、ドギツサもあった。

子どもにはあまり見せたくないなと思い、隠しておいたのだが、

いつのまにか子どもが見つけて読んでいたのを知り、あわてたこともある。

大人の漫画には、刺激の強い描写があったり、ちょっと人目を避けて読んだ方がいいかなというものもあった。

   

 こうしてみると、子どもの時から実に様々な漫画を読んできたが、「どの作家を一番に挙げる?」と聞かれたら、

難しいところだが、私は手塚治虫と答えたい。
   

奇子 手塚治虫文庫全集(1)

   

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