うちにまだテレビがなかったころ、友だちの家に遊びに行き、そこで「鉄腕アトム」を見せてもらっていた。
手塚治虫の偉大さは、まだ知らなかった。
あるとき、学級文庫になぜか手塚治虫の「リボンの騎士」があった。
読んでみると、絵もかわいいし、面白くて面白くて、どんどん引き込まれた。
しかしそれは途中で終わっていた。
まだ続きがあるのだ。
続きをどうやって手に入れたらいいんだろう?
世の中のことをほとんどわかっていなかった私は、
そういうときにどうしたらいいのかわからないまま、あの続きが読みたいと思い続けるだけだった。
大人になり、手塚治虫の作品にたくさん巡り合えた。
きっかけは、夫が買ってきた「COM」という雑誌だ。
そこに「火の鳥」が掲載され、なんておもしろい漫画だろうと、たちまち取りつかれた。
彼の漫画はどんなにシリアスなテーマを扱っていても、
ユーモラスなキャラクターが登場したり、ところどころに、ちょっとしたおふざけのようなコマが入っている。
そのセンスがまた天才的だと思う。
「ブラック・ジャック」はあまりにも有名だが、
そのほかに「人間昆虫記」「アドルフに告ぐ」「シュマリ」「奇子」「ファウスト」「ブッダ」などなどに夢中になる中で、
ある日、古本屋の棚に「リボンの騎士」を見つけた。
古~いハードカバーの物と、その続きの単行本とだ。
「ここにあった!」と胸ときめかせそれらを買い求め、懐かしく読みふけった。
しかし、なんといっても「火の鳥」だろう。
あたかも現代のこの状況と行く末を予言するかのような作品だ。
彼がこの世にいたら、この「コロナ」のことをどう表現するだろうか。
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