第103話 ジーンズ裂けちゃった

yomiuriland 青年期

    
 大学の新学期。

部活が新入生の勧誘合戦をするのは、今も昔も変わらないようだ。
   

友だちと一緒に回って歩いた。

写真部がいいかな、テニス部がいいかな、などと考えていたが、写真機やラケットを買う必要がある。
   

親に「買って」とは言いにくかったので、道具を持っているスキー部はどうかなと思った。
   

   

 友だちもスキー部に関心があったので、部室を訪問した。
   

部室のある建物の前で、スキーのストックワークをしている男子学生が、チャラい感じだった。

ちょっと嫌だなと思ったが、友だちは乗り気だったので入ってみた。

   

 他に同期の女子が4~5人いた。

まず、トレーニングということで、走らされた。
   

短距離はいいが、長距離を走るのは大の苦手で、息が上がるしよこぱらが痛くなる。

すぐ「無理」と思ったが、他の女の子たちも似たようなものだったので、「ま、いいか」と思った。

   

   

 5月だったと思うが、よみうりランド に滑りに行くという。

雪ではなく、ブラシを敷き詰めた人工スキー場だ。

よみうりランドへの道は、坂になっていた。

そこを、スキーをかついで登るのが、これまたしんどくて、やはり「無理」と感じた。

   

 ブラシのスキー場は、隣がジャンプ台になっていた。

スロープを見ると異様な感じがして、滑ってみると、なんか滑りにくいし怖いしで、おっかなびっくり滑った。

他の女の子たちも同じようなものだったので、そこは気が楽だったのだが。

   

 ついに、思い切り転んだ。

バツッ!

ジーンズのお尻のところが、縦にぷたつにけた。

なんでこうなるの? 

ああ嫌になっちゃう。

   

さいわい、上級生の女子で、替えのエラスティックパンツ(伸縮性のあるスキー用ズボン)を持ってきていた人がいて、それを借りることができたが。

やれやれ、スキー部は続きそうもないなと思った。

   

 しかし、どうしたことか?

中学校、高校を通じて部活が全く続かなかったのに、なんと、ここからスキーに明け暮れる生活が始まったのだ。

なぜなのかは、わからない。

成長が遅かっただけなのかもしれないが、思い返してみると、確かに楽しかったのだ。


注 三井住友トラスト不動産 「よみうりランド」の歴史
https://smtrc.jp/town-archives/city/shinyurigaoka/p05.html

   

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