第98話 代ゼミとパフェ

classroom思春期

 今、大学進学を考える高校3年生であれば、受験のために塾通いをするのが一般的のようだ。

私の時代は、そもそも大学受験のための塾というものが、あまり存在しなかったと思う。
   

駿すんだい(駿台予備学校)とか河合塾とかはあったが、浪人生のための予備校という色彩が強かったように思う。

その中で、代ゼミ(代々木ゼミナール)が、大学受験の塾のような機能をもっていた。

   

 もともと勉強家ではない私たち仲良しグループは、高校3年生の夏休みも、泊りがけで海へ行き、遊びほうけていた。

海辺では、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」と、舟木一夫の「高校三年生」が、ひっきりなしに流れていて、「ぼくら、はなればなれになろうとも の「ぼくら」が耳に焼き付いてしまった。

   

ザ・ピーナッツ 恋のバカンス

   

 当時、小田(まこと)さんという人が若者の間で注目を浴びていた。

彼は学生時代に世界無銭旅行をして、それを「何でも見てやろう」という体験記に著し、大評判になっていた。

    

その小田実さんが、代ゼミで英語の長文読解の講座をもっていると耳にし、ミーハー的好奇心で友だちと一緒にその講座をとることにした。

私は彼の風貌ふうぼうにも興味を持っていたので、よく見なければと思って、一番前の席に座った。
   

何でも見てやろう(講談社文庫)

   

 授業は難しくて、よくわからなかった。

休憩時間になり、彼が私の方に近づいてきて、「今何時ですか?」と聞いた。

「チャンス!」と思って、急いで自分の時計を出して、彼に見せた。
   

彼はそれを見ながら自分の時計を合わせたのだが、その時計がディズニーウォッチだったのだ。面白い人だなあと思った。

意外にも、はにかんだような様子が新鮮だった。

   

 帰りに、友だちと喫茶店によってパフェを食べた。これがとても楽しかった。

5日間ほどの講座だったが、私にとってはレベルが高すぎて、ついていけなかった。しかし、できるだけおいしいパフェを食べようと喫茶店巡りをしたことが思い出に残っている。

塾通いは後にも先にもこれだけである。
   

注「高校三年生」作詞  丘 灯至夫
   

THE PEANUTS “THE BEST 50-50”

   

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