第87話 マリリン・モンロー

marilyn monroe 思春期

    
 高校2年生のときだった。

マリリン・モンローが亡くなったというニュースが、世界を駆け巡った。

   

マリリン・モンローと言えば、今や伝説の女優となっている。

地下鉄の通風口からの風に、スカートを吹き上げられる写真が有名だ。

   

 彼女の映画は、ほとんど見ていない。

劇場では、小学生の頃、父につきあって「王子と踊子」という映画を見ただけだ。
   

   
   
「王子と踊子」と聞いて、初め、御伽噺おとぎばなしなのかと思っていたのに全然違った。

主演らしき女性がマリリン・モンローだとも知らず、その上、幼い目からは彼女が美人には見えなかった。

歩いて行く後姿が印象に残っている。

   

 そういえば、父と母が「ナイアガラ」という映画の話をしていたことを思い出す。

話を聞いていて面白そうだなあと思ったが、それがマリリン・モンローの映画だとは知らなかった。
   

   

 高校を通じてずっと仲良くしていた友だちが、大の映画好きだった。

その点で意気投合し、しょっちゅう映画の話をしていた。

彼女はマリリン・モンローの大ファンで、その美しさをたたえていたが、私にはピンとこなかった。

私は、オードリー・ヘプバーンが素敵だとか、ヴィヴィアン・リーがきれいだなあとか思っていた。
   

その友だちは、男優ではクラーク・ゲーブルが大好きだと言っていた。

私はジェームズ・ディーンが大好きだった。

クラーク・ゲーブルが好きな気持ちが分からなかったし、友だちは、ジェームズ・ディーンのどこがいいの? という風だった。

   

 大人になり、テレビで「荒馬と女」という映画を見た。

主演はしくもマリリン・モンローとクラーク・ゲーブル。
   

   
   
そこで初めてマリリンの素晴らしさに心を打たれた。

セクシーであることはもちろんだが、偽りのない可愛らしさ、優しさ、温かさにあふれていた。

女の私が抱きしめたくなるような感じだった。

こんな女優さんは、二度と現れないだろうなと思った。
   

友だちは高校生の時から、これがわかっていたのか、ずいぶん早熟だったんだなあ。

あるいは自分の趣向が幼かったのかもしれない。

   

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