「緑の丘の赤い屋根、とんがり帽子の時計台、鐘が鳴りますキンコンカン、メイメイ子山羊も啼いてます……」注1
この懐かしい歌は「鐘の鳴る丘」というラジオドラマの主題歌だったらしいが、「さくらんぼ大将」と記憶がごっちゃになっている。
この歌と、「さくらんぼ大将!」という元気な男の子の声が重なっている。
でもこのドラマが放送されていたころは、私はまだ幼く、内容を聞いたのではなく、歌だけ聞こえてきたという感じだ。
ラジオドラマを楽しみに聞き始めたのは「笛吹童子」からだ。
「ヒャラーリヒャラリコ、ヒャリーコヒャラレロ……」注2 と始まった。
これは漫画にもなっていて、漫画も読んだ。
その次は「紅孔雀」だった。
友だちと紅孔雀ごっこをしたことを覚えている。
私はこういう遊びをする時、たいてい正義の味方ではなく、盗賊などの悪者の役をやりたがった。
テレビが各家庭にある時代ではなかったから、
今の子どもたちがテレビの番組を楽しみにするように、ラジオドラマを楽しみにしていた。
いろいろなものがあったが、記憶に残っているものに、
「剣をとっては日本一に、夢は大きな少年剣士……がんばれ、強いぞ、ぼくらの仲間、赤胴鈴之助!」注3 がある。
「あかどう、すずのすけだー!」という威勢のいい名乗りから始まる。
臨海学校の最後の晩の出し物で「赤胴鈴之助」をやったのを覚えている。
そういえば、確か吉永小百合さんが「さゆり」という女の子の役で出ていたように思う。
一番楽しみにして聞いていたのが「少年探偵団」だ。
「ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団、勇気りんりん瑠璃の色……」注4
家の前で遊んでいて、母に、時間になったら教えてと頼んでおき、
5時半ぐらいだったか、急いで帰って聞いたものだ。
小林少年とその仲間が、明智小五郎先生と行動を共にしていることが不思議だった。
この子たち、学校はどうなってるのかなあ……と。
怪人二十面相を追い詰めて、いつも最後のところで逃げられる。
ある時二十面相が、アドバルーンに乗って「ワッハッハ……」と空に消えていくというくだりがあった。
当時デパートにはアドバルーンが上がっていたものだ。
また、学校の運動会が予定通りに行われますよ、という合図にアドバルーンが使われたこともある。
朝起きると母が「アドバルーンが上がってるわよ!」と声をかけてくれ、
運動会大好き少女だった私はワクワクした。
さて、ラジオドラマは「連続ラジオ小説、下村湖人原作『次郎物語』」というのも印象に残っている。
今でも時々思い出すセリフがある。
うろ覚えではあるが「子どもっていうのは、可愛がってやりさえすればいいのね」という母親の言葉だ。
歳を取ると、この言葉の意味が分かる。
そして時は流れ、テレビの時代になっていくのである。
注1「とんがり帽子」 作詞 菊田一夫
注2「笛吹童子」 作詞 北村寿夫
注3「赤胴鈴之助の歌」 作詞 藤島信人
注4「少年探偵団の歌」 作詞 壇上文雄
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