ある日、朝ご飯を食べていると、父が母に「おまえ、また、かあさまと衝突しただろう」と言った。
父は自分の母親のことを「かあさま」と呼んでいた。
母は心外だというように言い返したが、さらに父が責めるので口論となり、母は、だんだん興奮して泣きながら抗議した。
私は緊張と怖さで心臓がどきどきして、ご飯がのどを通らなくなった。
父がその様子を見てか、「もうやめろ、〇〇が学校にいけなくなるだろう?」と言った。
暗く陰鬱な気持ちで家を出た。
足取りも重く、とぼとぼと学校に向かった。
道路には子どもたちがたくさん歩いていたが、みんな、私のような不幸な思いはしていないのだ、みんな気楽でいいなあ、などと感じながら歩いた。
学校に着いたが、教室からは、みんなのざわざわした声が聞こえてくる。
みんなは私が今朝経験したことを知らない。
みんなが知らない重荷を背負っているような、沈んだ気持ちで席に着いた。
すると、隣に座っている友だちが、いつもと変わらない明るく穏やかな声で話しかけてきた。
その瞬間に心がすーっと軽くなり、まるで氷が解けていくように温かさに包まれているように感じたのだ。
私はすぐ元気になり、ニコニコして話し始めた。
このときのことが忘れられない。
友だちってこんなに優しいんだ、友だちっていいなあ、と感じたときだった。
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