第10話 くずやさん

cart幼児期

 当時は、「くずーい~、おはら~い」と言いながら、くずやさんが道を歩いていたものだ。

リヤカーを引きながらの人もいれば、ナンキン袋のような大きな袋を、肩に担いでいる人もいた。

くずやさんが一軒一軒「おはらい物はありますか?」と聞いてまわったり、あるいは必要な人が、掛け声を聞いて呼び止めたりした。

   

 私はそのころ、くずやさんの機能を理解しておらず、くずやさんは、くずを集めてまわる人だと思っていた。

そしてなぜか怖い人だと思っていたのだ。

それは母が「くずやさんに、袋に入れて連れて行かれたらどうする?」などという、子どもを恐怖におとしいれるような冗談を、平気で言ったりするからだった。
   

幼心に、あの大きな袋の中に子どもを入れて歩いているのかな、と本気で思ったりしたものだ(くずやさん、ごめんなさい)。

もう少し大きくなると、子どもを連れて行くなどとはさすがに思わなくなったが。

   

 くずやさんに出すものと言うと、いらなくなった何かの道具だったり、衣類もあったように覚えている。

分銅のついた天秤ばかりで重さをはかり、計算してお金を出す。

あの天秤ばかりは懐かしい。

重さのバランスを取るために手際よく分銅を足したり、メモリを指す針を微妙に動かすのが興味深かった。

   

 いらなくなったものを持って行ってもらうのに、なぜお金をもらうのか不思議だったが、要するにくずやさんとは、今でいう廃品回収業のようなものだ。
   

昔ならくずやさんに、おはらいものとして出していたようなものは、今はだいたい燃えないゴミとして廃棄される。

チリ紙交換というものもなくなり、紙類は資源ごみとして回収される。

合理的になったと言えばそうだが、人との触れ合いは減っている。
   

しかし、なぜ「くずや~おはら~い」でなく、「くずーい~おはら~い」なのだろう。

   

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