「北海道」で仲良くなった彼とは、放課後に学校のどこかで話したり、帰りに喫茶店に寄ったりする程度の付き合いだった。
マクドナルドもドトールもスターバックスもない時代だ。
喫茶店を「サテン」などと呼んで、そこが若者のたまり場だった。
ある冬の日、初めて映画を見に行くことになった。
初デートだ。
高校2年だったから、かなり遅い方だと思う。
「太陽はひとりぼっち」という映画だった。
この主題歌を、日本では園まりさんが歌っていた。
「太陽はひとりぼっち」
「太陽がいっぱい」でブレイクしたアラン・ドロンの映画ということで話題にはなっていたが、
観てみると、テーマが抽象的で、子どもにはなんとも分かりにくい映画だった。
印象に残っているのは、アラン・ドロンとモニカ・ヴィッティが、何かの窓ガラス越しにいちゃいちゃする場面だ。
この映画、最後まで観るのは、けっこうしんどいなと思って横を見ると、彼は完全に熟睡していた。
見終わり、やれやれというところで、「何か食べよう」と言われ、「おなかすいてない」と言った。
「食べよう食べよう」と言う彼に、「食べたくない」を繰り返し、結局「喫茶店」に入った。
彼はメニューの中で一番ボリュームのある、アイスクリームやら果物やらが盛りだくさんの物を頼んで食べていた。
おなかが空いてたんだろうな、とちょっと気の毒だった。
私は早く帰りたくて、「ああ、デートって、めんどくさいものなんだなあ」と思っていた。
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