第105話 月山その2 山小屋の生活と雪渓、かまどごはん

cooking stove 青年期

山小屋の生活と雪渓

営林署の小屋ってどんなところ? 

 営林署の小屋は2階建てで、かなり広かった。

上下とも畳敷きだった。

下の広間でご飯を食べたり、ミーティングをしたりした。

上で寝た。

   

 電気はなく、アセチレンランプの灯だけだった。

その周りだけが明るく、部屋のすみの方は薄暗かった。

広間の壁ぎわに大きなかまどがあり、その前には囲炉裏いろりが切ってあった。

今、思い返してみると、いい雰囲気だった。

   

ご飯はどうしたの?

 竈に薪をくべて、特大のお釜でご飯を炊いた。

同期の男子が「俺に任せて」とご飯炊きを一手に引き受けた。

いろいろな特技を持っている人がいるものだ。

   

 台所にはプロパンのガスコンロがあり、おかずはそこで作る。

米や食材は、すべてみんなでかつぎ上げたのだ。
   

1年と2年がペアになって、食事当番をになった。

体育会というのは、2年生が一番こき使われる。

泣く子も黙る3年生、4年生は神様だった。

が、この合宿に4年生は参加していなかった。

   

トイレは?

 トイレは一つしかなかった。

同期女子の一人が言った。

「みんな同じものを食べてるから、同じ臭いだよね」

   

雪渓を滑るって、どんな感じ?

 7月末の山形は、まだ梅雨の最中で、しとしとと雨が降ることが多かった。

弱い雨の中を、スキーを担いでさらに頂上近くまで登ると、

雪渓せっけい(夏でも雪が残っている渓谷けいこく)が広がっており、そこが私たちのゲレンデとなった。

他には誰もいない、貸し切り状態だ。

   

   

 天気がいいと、夏空の下のスキーは爽快そうかいだった。

私たち女子は長袖のシャツで滑ったが、

上級生の男子の中には、ランニングで滑ったり、半ズボンにひざまでの靴下で滑ったりする人もいた。
   

 雪というより氷に近い。

転ぶとめちゃくちゃ痛くて、みんなお尻に青あざができた。

ところどころ、雪が解けて岩がしゅつしているところもあった。

   

天候急変

 あるとき、練習中に天候が急変し、急いで下りることになった。

女子から先に下りることになり、その先導を任されたのが同期の男子一人と、

新入生勧誘のときに見かけて「チャラい」と感じた2年生の男子だった。
   

    

 冷たい風がビュービュー吹き、雪渓の表面から氷の粒のようなものが吹き上がる。

たどたどしくスキーをりつつ下りる私たちを、辛抱しんぼう強くサポートする男子が頼もしかった。

   

誰かのバッケン(靴をスキーに固定するための金具)が外れてしまうと、足元にしゃがんで、それを直した。

   

また、ある女子が「寒い、寒い!」 と言って泣き出すと、

例のチャラいと思っていた男子が、イライラせずに自分のヤッケを脱いで着せたりした。

こういう時の振る舞い方で、その人のうつわが分かると思った。
   

他にも、いろいろなことがあった。それはまた続きをお楽しみに。

to be continued・・


 総合南東北病院「健康情報 こんにちわ」2019年12月号
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