第46話 井戸と石炭ストーブ

Potbelly stove 学童期(東京編)

井戸

 私たちのクラスの教室は、校舎の一番端っこにあった。

その教室の横に井戸があった。

   

 井戸の水をくむのにはコツがある。

ポンプで水を汲みあげるためのハンドルがあるのだが、

それを単に上下させるだけでは、空振りのようにスカスカと空気だけ漏れてきて、水が上がってこない。
   

ハンドルを持ち上げ、一呼吸おいてからギューッと力を込めて振り下ろすと、水がザーッと出てくる。

いったん出てくれば、後はどんどん上下させると、水がザブザブ出てくるのだ。

   

手押しポンプ

   

 井戸で水を汲むのは面白かった。

これは掃除の時間によく使った。
   

高学年になると、渡り廊下のすのこを掃除する当番が回ってくる。

これはとても楽しかった。

校舎の壁にすのこを立てかけ、そこに井戸水をぶっかけて洗うのだ。
   

その当時はポリバケツなど存在しない。

金物のバケツに水を汲み、それを片手で持って、水がこぼれないように上下にぐるぐる回す遊びが流行った。

バケツが逆さになっても、遠心力で水はこぼれないのだ。

遠心力というのは、こういうときに一番よくわかる。
   

合間に竹ぼうきをてのひらに立てて、倒れないようにバランスをとって走り回る。

渡り廊下の掃除は、ほとんど遊びだった。

   

石炭ストーブ

 冬になると石炭ストーブで暖を取った。

当番の日は、楕円形の大きな金物のバケツを持っていき、

校舎の裏の塀にそって積み上げられた石炭の山から、大きなシャベルで石炭をすくってバケツに入れる。

これは二人組になって運んだ。

そして教室のストーブの横に置く。

こんな作業を、子どもはとても喜んでやるものだ。

   

 先生がヤスリ板で書いたロウ原紙を、謄写版とうしゃばんにセットして、インクをローラーにつけ、原紙の上を転がして印刷する。

いわゆるガリ版であるが、当時学校の印刷物は、すべてこのようにして作られた。

この手伝いもよくしたものだ。
   

小学生の自分を思い出すと、せっせと動き回っている姿が思い浮かぶ。
   

※参考
「ナガジン」 もう一度ガリ版の事を考える時が来たのかもしれない【ガリ版体験レポ】
https://www.nagazine.jp/gariban/

   

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