1年生のときは、学校が始まるぎりぎりに登校していた。
みなそうしているものだと思い込んでいた。
ところがあるとき、ふと気づいた。
どうやらみんなは、学校が始まるかなり前に登校して、始まるまで校庭で遊んでいるようだと。
ある日のこと、思い切って早目に登校してみた。
大勢の生徒たちが校庭で遊んでいる。
自分のクラスの友達も見つけた。
しかし、どういう手続きを踏んでその遊びの中に入っていくのか、それが問題だった。
少し離れたところから見ていた。
校庭から階段で少し上がったところに校舎があるが、
校舎とその階段の間の平らなところには、花壇や、金魚などが泳いでいる石造りの水槽があった。
その水槽のふちを掌でこすりながら、友だちが遊んでいるのを見ていた。
しばらくすると、その友達の中の一人が、
たしか、背が高くクラスのお姉さんのような人だったが、私のところに来て、誘ってくれた。
初め断ったが、少ししてから、やっぱり行ってみようかなと思って、近づいて行った。
大繩のような遊びだったと思う。
こんな風に周囲のことに疎かったので
授業中も、先生の話していることが、これから自分のすべきことなのだという理解をしておらず、他人事のように聞いていた。
さぞかし反応が鈍かったであろう。
個人面談で、先生が母に
「先生の話をよく聞いていない、的外れな行動をする」というようなことを言ったらしい。
すると母はこう言ったそうだ。
「あの子は耳が遠いんです。ですから席を一番前にしてやってください」と。
以来、席は一番前になった。
隣は、とても背が低い女の子だった。
私は耳が遠いんだろうか?
知らなかったなあ、と思った。
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