私たちの学校に、天皇陛下がいらっしゃることになった。
「へえ~、すごい」と思った。
学校は、私たちに日の丸の旗を作るよう命じた。
材料を渡され、家で作ってくるように言われた。
これが簡単そうで、簡単ではなかった。
半紙に丸を描いて、絵具だったのかクレパスだったのか、その辺は忘れてしまったが、塗ればいいだけの話だから、すぐできそうである。
ところがなんか変な形になってしまう。
母に訴えたが、あまり興味がなさそうだった。
母も少し変わっていたかもしれない。
やっと日の丸を描いても、これを割りばしのような芯棒にのり付けするのが一苦労であった。
くっついたと思っても、すぐはがれてしまう。
さんざん苦労して作った、できそこないの日の丸の旗を持って、当日を迎えた。
住んでいた兵庫県の地域は、山に向かって坂になっており、その坂道に沿って家が建っていたり、学校が建っていたりした。
学校の正門は、そこを右に入って上がって行ったところにあった。
その正門のあたりから運動場に向かって、私たちは日の丸の旗を手に持ち、並ばされた。
天皇陛下がお通りになるときに、旗を振るように言われていた。
果たして、なにかが通過したような気がする。
みんなが旗を振ったので私も振ったが、例によって、左右の友達がどのように振るのか見ながら振っているうちに、あっという間に終わってしまった。
どれが天皇陛下の車だったのだろう。
天皇陛下は私たちの学校に、なんの御用があったのだろう。
なにもわからないうちに終わってしまった。
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