第67話 Oh! Carol

Rockabilly 思春期

  
 ある日、音楽の時間にペーパーが回ってきた。

授業中、みんなに伝えたいことを書いた紙をこっそり回す、こういうことは、今の中学生もやっているだろうか。

先生に気づかれないようにやれていると思っていたが、今考えてみると、気づかないはずはないよなあと思う。
   

そこには英語の歌の歌詞が書いてあった。

ニール・セダカ の「Oh!Carol」だ。
   

Oh!Carol, I am but a fool 
Darling, I love you though you treat me cruel
 

   
大急ぎで写して後ろに回す。

   

ニール・セダカ 「オーキャロル」 Neil Sedaka “Oh Carol”

   

 アメリカン・ポップス全盛期の頃、日本にはまだ今のようなポップスがなかった。

ミッキー・カーチスさん、平尾昌晃さん、山下敬二郎さんたちが

日劇ウエスタンカーニバルなどで、アメリカのロックンロールを歌ったりしていたぐらいである。

当時はロカビリーと言っていた。

   

 私たちはプレスリーを筆頭として、ポール・アンカ、ニール・セダカ、パット・ブーン……などなどの歌を覚えては歌っていた。

プラターズというグループの歌も好きだったし、ハリー・ベラフォンテという素晴らしい歌手もいた。

そういえばペリー・コモ・ショーというテレビ番組もあったっけ。
   

ポール・アンカの「ダイアナ」とか

ニール・セダカの「恋の片道切符」とか、

パット・ブーンの「砂に書いたラブレター」や「アイルビーホーム」など、

たいていの歌は、中学生でもわかるような英語だったので覚えやすかった。

   

パット・ブーン「砂に書いたラブ・レター」 Pat Boone – Love Letters In The Sand

   

 プレスリーの「ハートブレイクホテル」は、日本語に訳したものを日本のロカビリー歌手が歌い、それを子どもたちがよく真似したものだ。

   
当時は外国の歌手の映像を直接テレビで見ることはできず、日本人歌手がそれを真似して歌い、テレビで放映した。
   

臨海学校の最後の夜の出し物で、

男の子たちがほうきをギターに見立てて片膝を落としてまねをし、みんなで盛り上がったのを覚えている。

   

エルヴィス・プレスリー「好きにならずにいられない」 Elvis Presley – Can’t Help Falling In Love

   

プレスリーの歌では、私はどちらかと言うとバラードの方が好きだった。

あの素敵な声で、「好きにならずにいられない」とか「Are you lonesome tonight?」を聴くと、うっとりした。
   

MEGAエルヴィス~エルヴィス・プレスリー・エッセンシャル・コレクション(湯川れい子選曲)

   
   

主にラジオで聞いていた。

CDもDVDもカセットテープでさえなかった、携帯電話なんて夢のまた夢の時代。

   

 そのころ流行った歌や音楽は、アメリカだけでなくヨーロッパのものもたくさんあった。

「Volare!ボラーレ」

(イタリアの歌手 Domenico Modugno ドメニコ・モドゥーニョ の『Nel blu dipinto di blu 青に染まった青の中』……ビールのコマーシャルで使われた、その原曲)とか、

「アルディラ」、また映画のサウンドトラックもいろいろなものがあった。
   

Volare – Domenico Modugno – Nel blu dipinto di blu

   

その人気を確固たるものにした、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」の主題曲はロングヒットだった。

フランスの「ぼくの伯父さん」という映画の主題歌も懐かしい。

   

Nino Rota 映画「太陽がいっぱい」 Plein Soleil

   
   

 最近は、私が中学生や高校生だったころの曲が流れるのをちょくちょく耳にする。

それを聴くと、あたかもそのころの自分が今ここにいるような気がする。
   

注 作詞 Howard Greenfield/Neil Sedaka
   

   

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