井戸
私たちのクラスの教室は、校舎の一番端っこにあった。
その教室の横に井戸があった。
井戸の水をくむのにはコツがある。
ポンプで水を汲みあげるためのハンドルがあるのだが、
それを単に上下させるだけでは、空振りのようにスカスカと空気だけ漏れてきて、水が上がってこない。
ハンドルを持ち上げ、一呼吸おいてからギューッと力を込めて振り下ろすと、水がザーッと出てくる。
いったん出てくれば、後はどんどん上下させると、水がザブザブ出てくるのだ。
井戸で水を汲むのは面白かった。
これは掃除の時間によく使った。
高学年になると、渡り廊下のすのこを掃除する当番が回ってくる。
これはとても楽しかった。
校舎の壁にすのこを立てかけ、そこに井戸水をぶっかけて洗うのだ。
その当時はポリバケツなど存在しない。
金物のバケツに水を汲み、それを片手で持って、水がこぼれないように上下にぐるぐる回す遊びが流行った。
バケツが逆さになっても、遠心力で水はこぼれないのだ。
遠心力というのは、こういうときに一番よくわかる。
合間に竹ぼうきを掌に立てて、倒れないようにバランスをとって走り回る。
渡り廊下の掃除は、ほとんど遊びだった。
石炭ストーブ
冬になると石炭ストーブで暖を取った。
当番の日は、楕円形の大きな金物のバケツを持っていき、
校舎の裏の塀にそって積み上げられた石炭の山から、大きなシャベルで石炭をすくってバケツに入れる。
これは二人組になって運んだ。
そして教室のストーブの横に置く。
こんな作業を、子どもはとても喜んでやるものだ。
先生がヤスリ板で書いたロウ原紙を、謄写版にセットして、インクをローラーにつけ、原紙の上を転がして印刷する。
いわゆるガリ版であるが、当時学校の印刷物は、すべてこのようにして作られた。
この手伝いもよくしたものだ。
小学生の自分を思い出すと、せっせと動き回っている姿が思い浮かぶ。
※参考
「ナガジン」 もう一度ガリ版の事を考える時が来たのかもしれない【ガリ版体験レポ】
https://www.nagazine.jp/gariban/
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