昔は「どぶ」、今で言う側溝だが、それにはふたがなかったと記憶している。
子どもの頃、学校の帰りなどに、よくどぶに片足突っ込んでいた。
片足を踏み外して、どぶに落ちるのだ。
片足をドロドロにして帰り、「またどぶに落ちたの? 注意散漫ね」などと母に言われたものだ。
また、「おっちょこちょい」とも言われた。
私にしてみれば、注意散漫と言うより考えごとをしながら歩いていて、つい足を踏み外すという感じなんだけれど。
とはいえ、おっちょこちょいは確かにあると思う。
テーブルの上にある何かを取ろうとして、手前にあるコップなどに手をぶつけてひっくり返し、机の上を水浸しにすることは、ちょくちょくある。
周りの人が、急いでティッシュやふきんで拭いてくれる。
並んだ机の間を歩くときには、必ずと言っていいほど机の角に腰をぶつける。
こんなことが、この歳になってもしょっちゅうあるのだ。
これはおっちょこちょいのせいなのか、注意散漫なのか?
考えてみるに、これは自分の体と周囲の物との間の距離を、測りそこなっているのではないかと思う。
大多数の人は本能的にというか無意識に、周りの物の位置と自分の体との間の距離を測りつつ行動しているのに、
私はそれができてないのでは? と思う。
だから道の端に寄りすぎて、どぶに落ちるのだ。
空間認知の悪さなのだと思う。
こういう人はものごとを行う時に、なるべくゆっくりやるといいのだろう。
そうすれば周りとの距離を測る余裕ができるからだ。
しかし、おっちょこちょいのせいで、ついせかせかと行動してしまう。
スキーで民宿に泊まり、雪をかぶった田んぼを歩いていたときのことだ。
「そっちのほうにドツボ(肥溜め)があるから気をつけてや」という民宿の人の声を上の空で聞きつつ、どんどん歩いてドボンと落ちた。
胸まで浸かった。
夫に引き上げてもらい民宿に帰ると、おばさんたちが「ドツボに落ちたってよー」と笑っているのが聞こえた。
お風呂に入り着替えたが、なんとなく自分が臭っていた。
おっちょこちょいは、なおらないようだ。
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