第32話 叔母の結婚式

shiromuku 学童期(関西編)

   

 母の妹が結婚することになった。

この叔母おばも私を可愛かわいがってくれ、お使いに連れて行ってくれたり、

男の人(たぶんお付き合いしていた人だろう)と一緒に遊園地に連れて行ってくれたりした。

デイトによくめいっ子を連れて行ったなと、今は不思議ふしぎに思う。

   

 結婚の相手はこの人ではなかった。

お見合いのようだった。
   

当時、今のようにホテルなどで豪華ごうかな結婚式をげる人は少なかったようだ。

叔母は近くの神社で式を挙げ、披露宴ひろうえんのパーティーをうちでやったのだ。

   

 当日、家じゅう大忙しだった。

母の弟たちは、たいを焼いたり、鶏をつぶしたりしていた。

母はケーキを焼いて、生クリームでデコレーションをしていた。
   

 そして私はなぜか不機嫌ふきげんになり、ぐずぐず泣いていた。

母が「この忙しいときに、なんでビービー泣くの?」と嫌がっていた。
   

crying girl

   
お客様が来て、家の中の雰囲気ふんいきがなんとなく変わったりすると、なぜか機嫌が悪くなって泣くことが多かった、そんなめんどくさい子どもだった。

この日もそうだったのだ。

   

 居間いまと、それにつながった畳の部屋にまたがってテーブルをつなげて、白いテーブルクロスをかけ、ごちそうが並んだ。

そこへ、新郎新婦しんろうしんぷである叔母とお相手の男性がやってきた。

叔母はけっこうニコニコしていた。

   

 パーティーは続き、大人たちはお酒を飲みながら、わいわい話していたが、私は座ってはいたもののきてしまった。

すると、隣に座っていた知らない親戚しんせきらしきおじさんが、マッチを使って手品のようなことをしてくれた。

このおじさんいい人だなあ、とそのとき思った。

あれはだれだったのだろう?

   

 パーティーが終わると、二人は車で出発した。

ハネムーンに出かけたのだ。

叔母が、スーツのえりのところに花をつけていたのをよく覚えている。
   

玄関を出るとき、母や兄弟たちは笑い声を挙げながら、お米をいたり、車に缶カラをつけようよ、などとさわいでいた。

昔アメリカなどでは、結婚式で新郎新婦にお米を撒いたり、ハネムーンに出かける車の後ろに缶を付けて引きずって走っていくという光景が、映画などでよくみられた。

その真似まねをしていたわけだ。
   

笑っている女の子

   
 このときになって、ようやく私はこのイベントに慣れてきて、機嫌は直っていたと記憶している。

今になって思い返せばあたたかい、手作りの結婚式だった。
   

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