第18話 海辺に立ち尽くす女の子

beach 学童期(関西編)

    
 当時住んでいたところは、瀬戸内海に面し、背後には六甲ろっこう山地があり、海も山も近い地形だった。

したがって海までは歩いても行ける距離だった。
   

 夏休みに、林間学校だったか臨海学校だったか正確には覚えていないが、

いわゆる登校日が何日間か続けて設定され、学校に行って、あさがおを折り紙で作ったりした。

そして、海で水泳をするという日もあった。

   

 学校に集まり、遠足のようないでたちで水筒を肩から下げて、みんなで歩いて海まで行った。

もちろん水着も持って。

ちなみにそのころ、水着と言わずに海水かいすいと言っていた。
   

 海に着くと、シートのようなものを広げ、そこに荷物を置き、水着に着替えることになった。

私はワンピースを着ていた。

まず、パンツを脱いだ。

そこで、はたと困ってしまった。

   

どうやって水着を着たらいいんだろう?

   

ワンピースを脱ぐとぱだかになってしまう。

それは恥ずかしくてできない。

みんなはどんどん水着になっていく。

どうやって着替えたんだろう?

私はそこでフリーズしてしまった。
   

ワンピースのまま下から水着をはいて、大事なところを隠してからワンピースを脱げばいい話だが、なぜかそれが思いつかなかった。

   

 しかたなく、そのまま立っていた。

パンツを脱いでワンピースを着ているという状態で。

心地よい海風が吹いてきて、ワンピースの裾が揺れ、スースーした。
   

 先生が来て「風邪ひいてるの?」と言った。

風邪なので見学するつもりなのだと思ったようだ。

私は「ウン」とうなずいた。

それ以上なんということもなく、そこにいわば放置された。

呑気のんきな時代だ。

   

 結局、みんなが海で泳いだり遊んだりしている間、ずっとその場に立っていた。

どのタイミングでパンツをはいたのかは覚えていない。

   

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