当時住んでいたところは、瀬戸内海に面し、背後には六甲山地があり、海も山も近い地形だった。
したがって海までは歩いても行ける距離だった。
夏休みに、林間学校だったか臨海学校だったか正確には覚えていないが、
いわゆる登校日が何日間か続けて設定され、学校に行って、あさがおを折り紙で作ったりした。
そして、海で水泳をするという日もあった。
学校に集まり、遠足のようないでたちで水筒を肩から下げて、みんなで歩いて海まで行った。
もちろん水着も持って。
ちなみにそのころ、水着と言わずに海水着と言っていた。
海に着くと、シートのようなものを広げ、そこに荷物を置き、水着に着替えることになった。
私はワンピースを着ていた。
まず、パンツを脱いだ。
そこで、はたと困ってしまった。
どうやって水着を着たらいいんだろう?
ワンピースを脱ぐと素っ裸になってしまう。
それは恥ずかしくてできない。
みんなはどんどん水着になっていく。
どうやって着替えたんだろう?
私はそこでフリーズしてしまった。
ワンピースのまま下から水着をはいて、大事なところを隠してからワンピースを脱げばいい話だが、なぜかそれが思いつかなかった。
しかたなく、そのまま立っていた。
パンツを脱いでワンピースを着ているという状態で。
心地よい海風が吹いてきて、ワンピースの裾が揺れ、スースーした。
先生が来て「風邪ひいてるの?」と言った。
風邪なので見学するつもりなのだと思ったようだ。
私は「ウン」とうなずいた。
それ以上なんということもなく、そこにいわば放置された。
呑気な時代だ。
結局、みんなが海で泳いだり遊んだりしている間、ずっとその場に立っていた。
どのタイミングでパンツをはいたのかは覚えていない。
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