夫が移住のために購入したいという土地を、見に行くことになった。
地域で移住を積極的に斡旋している不動産屋に寄った。
夫とは既に顔見知りで、親しげに話をしている。
その不動産屋が、車で土地まで案内してくれた。
かなり山奥まで入ったところに、件の土地があった。
不動産屋がある街から、15㎞は離れている。
草ボーボーだ。
私がイメージしている移住とは、かけ離れていた。
こんな山奥じゃ、歩いて行ける距離に何もない。
バスも通ってない。
車が無ければ生活できないところだ。
今はよくても、もっと歳をとったらどうなるんだろう。
車が運転できなくなったら、どうするんだろう。
若ければ不便な所でも大丈夫だろう。
しかし歳をとったら、便利なところに住むのが鉄則じゃないだろうか。
生活上必要なところが、歩いて行ける距離にないと困るのでは?
いろいろ不安なことが頭に浮かんだ。
そのとき不動産屋が、浮かない顔をしている私の心中を読み取ったのか、こう言った。
「旦那さんは今までずっと頑張って働いて来たんだから、今少し遊ばせてあげて」と。
その言葉が、私の気持ちを穏やかにすっきりと納得させてくれた。
そうだね、これは遊びなんだ、遊ぶことって大事では?
いいじゃないか、先はどうなるかわからないけど、なるようになるだろう。
今、私もここで生活するようになり
毎日張り切って畑をやったり、田んぼの様子を見たり、土地の手入れをしたりしている夫を見ると、
これでよかったのだと思う。
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