数学の先生が好きだった。
そういうわけで、今の私を知る人はまさかと思うだろう、中学の時は数学が得意だった。
こういうと、さぞかし若いかっこいい先生なんだろうなと想像されるかもしれないが、すでに中年のおじさんだった。
しかし先生としては人気があった。
まだ小さい男のお子さんがあり、「坊」と呼んでいて、授業で時々「坊」の話をされた。
私は先生に認めてもらいたい気持ちで、数学のテストではいい点数を取るように心がけていた。
修学旅行のとき、なぜかこの先生が好きという気持ちが一気に盛り上がり、スイッチが入ったように燃え上がってしまった。
自分でもどうしてそんな気持ちになったのかわからないが、恋する乙女のようになった。
大部屋で寝るとき、その先生が見回りに来ないかなあと期待した。
あちこちの名所を巡るときは、できるだけ先生の後ろにぴったりついて歩くようにした。
どこだか忘れたが、ある場所で休憩になったとき、
その先生が私に、「○○さん、一緒に写真撮ろう」と言った。
驚きと恥ずかしさでドギマギした。
写真は隣のクラスの男子が撮ってくれた。
古いアルバムにその写真が貼ってある。
私はださ~いレインコートに身を包み、先生から少し離れて横に立っている。
なぜもっと近づかなかったんだろうと悔やまれる。
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