昭和こぼれ話9 劇団四季

theater 昭和こぼれ話

    
 学生の頃、友達に誘われて「トロイ戦争は起こらないだろう」というお芝居を観に行った。

私の記憶では、1965年だったと思う。

恐ろしく前だなあ。

上演していたのは「劇団四季」だ。
   

当時「劇団四季」は、今のようにミュージカルで有名な劇団ではなく、西洋のいわゆる新劇を演目にしていた。

   

 新劇を観るのは初めてだったので、幕が開き、女優さんの第一声が、ものすごく大きくてびっくりしてしまった。

日下くさか武史さんや、かげ万里江まりえさんが出ていたと記憶している。
   

物語の筋を追うのが苦手な私には、このお芝居は難解で、面白かったという感想はないのだが、初めて見た新劇の物珍しさが印象に残っている。

   

それより感慨深いのは、現在「劇団四季」が、ミュージカルを演ずる劇団としてこれほど有名になったことだ。

   

   

 学生のとき、クラスに芝居好きの男子がいた。

彼はおとなしくて、クラスの中で目立つ方ではなかったが、女の子と見まがうような美貌びぼうの持ち主だった。

演劇部に所属していて、彼が人前で演じているところを想像するのは難しかったが、普段とは別人のようであるらしかった。
   

 あるとき彼から「劇団四季の稽古、見に行かない?」と誘われた。

しかし、なんとなく面倒くさくて断ってしまった。

   

 大学を卒業してから聞いた話だが、この彼がなんと「劇団四季」に入団し、その直後の演目で主役に抜擢されたというのだ。

びっくり仰天だった。
   

悔やまれるのは、あのときなんで断っちゃったんだろう、ということだ。

お友達になれるチャンスだったのに……

   

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