学生の頃、友達に誘われて「トロイ戦争は起こらないだろう」というお芝居を観に行った。
私の記憶では、1965年だったと思う。
恐ろしく前だなあ。
上演していたのは「劇団四季」だ。
当時「劇団四季」は、今のようにミュージカルで有名な劇団ではなく、西洋のいわゆる新劇を演目にしていた。
新劇を観るのは初めてだったので、幕が開き、女優さんの第一声が、ものすごく大きくてびっくりしてしまった。
日下武史さんや、影万里江さんが出ていたと記憶している。
物語の筋を追うのが苦手な私には、このお芝居は難解で、面白かったという感想はないのだが、初めて見た新劇の物珍しさが印象に残っている。
それより感慨深いのは、現在「劇団四季」が、ミュージカルを演ずる劇団としてこれほど有名になったことだ。
学生のとき、クラスに芝居好きの男子がいた。
彼はおとなしくて、クラスの中で目立つ方ではなかったが、女の子と見まがうような美貌の持ち主だった。
演劇部に所属していて、彼が人前で演じているところを想像するのは難しかったが、普段とは別人のようであるらしかった。
あるとき彼から「劇団四季の稽古、見に行かない?」と誘われた。
しかし、なんとなく面倒くさくて断ってしまった。
大学を卒業してから聞いた話だが、この彼がなんと「劇団四季」に入団し、その直後の演目で主役に抜擢されたというのだ。
びっくり仰天だった。
悔やまれるのは、あのときなんで断っちゃったんだろう、ということだ。
お友達になれるチャンスだったのに……
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