ちょっと吉田拓郎の話
いつだったか、ラジオから吉田拓郎の話が聞こえてきた。
吉田拓郎は、私が30歳前後のとき一世を風靡し、大好きだった。
LPも持っている。
彼の明るく快い節回しと、気取らずにホントのこと言ってるよね、という歌詞と、独特な歌い方と声、すべてが自分の感性にピッタリと はまった。
レコード大賞を取った「襟裳岬」はもちろんだが、一番好きなのは「旅の宿」だ。
岡本おさみの歌詞もいいのだが、メロディーとギターの伴奏が相まって、なんともビューティフルだと思う。
ときは過ぎ、彼が肺がんを患ったと聞き、心配していたが、復活してテレビに出てきたのを見た。
ずいぶんスリムになって、なんだか顔も小さくなったように感じた。
その時は KinKi Kids と一緒に、あの「全部だきしめて」を歌っていた。
懐かしい彼の声だった。
嬉しかった。
今は、ヘアスタイルが昔と全く違うが、今の若い人に昔の可愛い姿を見せてあげたいものだ。
山へ行く話
ところで、ラジオから聞こえてきたのは次のような話だ。
「俺たちが若い頃はさ、女の子連れて山へ行くんだよね。
予め下見しておいて、どこで○○しようか、計画しておいてさ……」
というような話だ。
自分と同世代なので、「へえ、みんな似たようなことやってたんだなあ」と、とても楽しくなった。
学生の頃、山岳部の男子(うたごえ喫茶に行った彼)と付き合っていたことがあり、山に行かないかと誘われた。
山にはとても行きたかったので、OKした。
当時は、男性と旅行して一晩泊るなどということは、簡単にはできない時代だった。
母には本当のことを伝えたが、父には友だちと行くということにしてあった。
夜行で出発し、小海線のとある駅で降りて、歩き始めた。
天気も良く、楽しくおしゃべりしながら、山歩きというより、ハイキングという感じで。
途中でお弁当を食べたりして、順調に進んだ。
ある場所に差し掛かると、彼は、こっちに行ってみない? と道からそれて、山の傾斜地の中に入り込んで行った。
ちょっとした、たいらで日溜りになっているところに腰を下ろした。
そこで歌を歌ったりして心地よく過ごしていたが、そのとき、彼がふいに男女の関係を求めてきたのだ。
私は「何をするんだ!この無礼者!」という気持ちで、かたくなに拒否した。
結局、彼の目論見は失敗に終わった。
彼はすっかりしょげてしまい、楽しかった折角のデイトは後味の悪いものになってしまった。
今になって考えてみると、こういうことが起こると予想しなかった私は、よほど鈍いというか、男心が全く分かっていなかったということになる。
後で友だちに話すと、
「山に誘う時点で、そういうこと考えてるんじゃない?」
と、心外だと思っている私の方がアホなんだよ、という感じのコメントだった。
私が若い頃は、結婚もしていないのに、そんなことしていいの? という道徳観念がまだまだ強かった時代だ。
ラブホに行くという話もほとんど聞いたことが無い(その頃は、ラブホではなく、モーテルなどと言っていた)。
人目を忍んで、どこでなにをするか、けっこう苦労していたのではないかと思う。
それで、山へ行くなどという、ずいぶん手間暇かけた、ご苦労なことをしていたのかもしれない。
彼氏が山岳部だったので、こんなことがあったのだと思っていたのだが、吉田拓郎の話を聞いて、同じようなことをやっている人たちがいたんだなあと、おもしろく、懐かしかった。
ちなみに、職場の若者に聞いてみたことがある。
「女の子を連れて山に行ったりする?」と。
「ありえない。めんどくさい」だそうだ。
From T
コメント