昭和こぼれ話5 女の子を連れて山へ行く

mountain climbing 昭和こぼれ話

ちょっと吉田拓郎の話

 いつだったか、ラジオから吉田拓郎の話が聞こえてきた。

吉田拓郎は、私が30歳前後のとき一世を風靡ふうびし、大好きだった。

LPも持っている。

   

彼の明るくこころよふしまわしと、気取らずにホントのこと言ってるよね、という歌詞と、独特な歌い方と声、すべてが自分の感性にピッタリと はまった。

レコード大賞を取った「えり岬」はもちろんだが、一番好きなのは「旅の宿」だ。

岡本おさみの歌詞もいいのだが、メロディーとギターの伴奏が相まって、なんともビューティフルだと思う。

   

 ときは過ぎ、彼が肺がんをわずらったと聞き、心配していたが、復活してテレビに出てきたのを見た。

ずいぶんスリムになって、なんだか顔も小さくなったように感じた。

その時は KinKi Kids と一緒に、あの「全部だきしめて」を歌っていた。

懐かしい彼の声だった。

嬉しかった。

   

今は、ヘアスタイルが昔と全く違うが、今の若い人に昔の可愛い姿を見せてあげたいものだ。
   

吉田拓郎 「結婚しようよ」

   

山へ行く話

 ところで、ラジオから聞こえてきたのは次のような話だ。

「俺たちが若い頃はさ、女の子連れて山へ行くんだよね。

 あらかじめ下見しておいて、どこで○○しようか、計画しておいてさ……」

というような話だ。

自分と同世代なので、「へえ、みんな似たようなことやってたんだなあ」と、とても楽しくなった。

   

 学生の頃、山岳部の男子(うたごえ喫茶に行った彼)と付き合っていたことがあり、山に行かないかと誘われた。

   

   

山にはとても行きたかったので、OKした。
   

当時は、男性と旅行して一晩泊るなどということは、簡単にはできない時代だった。

母には本当のことを伝えたが、父には友だちと行くということにしてあった。

   

 夜行で出発し、小海こうみ線のとある駅で降りて、歩き始めた。

天気も良く、楽しくおしゃべりしながら、山歩きというより、ハイキングという感じで。

途中でお弁当を食べたりして、順調に進んだ。

   

 ある場所に差し掛かると、彼は、こっちに行ってみない? と道からそれて、山の傾斜地の中に入り込んで行った。
   

   
ちょっとした、たいらで日溜ひだまりになっているところに腰を下ろした。

   

そこで歌を歌ったりして心地よく過ごしていたが、そのとき、彼がふいに男女の関係を求めてきたのだ。

私は「何をするんだ!この礼者れいもの!」という気持ちで、かたくなに拒否した。
   

結局、彼の目論見もくろみは失敗に終わった。

彼はすっかりしょげてしまい、楽しかった折角せっかくのデイトは後味の悪いものになってしまった。

   

 今になって考えてみると、こういうことが起こると予想しなかった私は、よほどにぶいというか、男心が全く分かっていなかったということになる。

後で友だちに話すと、

「山に誘う時点で、そういうこと考えてるんじゃない?」

と、心外だと思っている私の方がアホなんだよ、という感じのコメントだった。

   

 私が若い頃は、結婚もしていないのに、そんなことしていいの? という道徳観念がまだまだ強かった時代だ。

ラブホに行くという話もほとんど聞いたことが無い(その頃は、ラブホではなく、モーテルなどと言っていた)。
   

motel

   
人目を忍んで、どこでなにをするか、けっこう苦労していたのではないかと思う。

それで、山へ行くなどという、ずいぶん手間てまひまかけた、ご苦労なことをしていたのかもしれない。

   

彼氏が山岳部だったので、こんなことがあったのだと思っていたのだが、吉田拓郎の話を聞いて、同じようなことをやっている人たちがいたんだなあと、おもしろく、懐かしかった。

   

 ちなみに、職場の若者に聞いてみたことがある。

「女の子を連れて山に行ったりする?」と。

「ありえない。めんどくさい」だそうだ。

   

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