小学校1年生になって間もないころ、先生がクラスのみんなを連れて学校の周りを散歩したことがある。
学校の裏手の方は、のどかな田園が広がっていた。
散歩の途中で突然尿意を催した。
誰にともなく言ったのだろうか、はっきりしたことは覚えていないが、
とにかくおしっこがしたいということが先生に伝わり、先生はあわてて飛んできた。
担任は年輩の男の先生で、私の目からはおじいちゃん先生だった。
先生は、どこかさせるところはないかと、あちこち探していたが、
私は我慢しきれず足元にジャーッと出してしまい、「でたー!」と叫んだことはよく覚えている。
先生はさらにあわてて飛んできて、ぬれた足元やらを見つつ「風邪ひかないかなあ」と心配していた。
その間、恥ずかしいとも思わないし、まして悪いことをしたなどとは全く思わなかった。
単におしっこが出てしまっただけだ。
着替えもないし、結局そのまま学校に帰り、いつも通りに下校の時間になった。
すると先生は、送ってあげるという。
学校の玄関前に自転車を止めて私を乗せ、「風邪ひくと大変だ」と言って、いざ出発となった。
先生は「家はどっち?」と聞いた。
実は、うちは道路を挟んで学校の向かい側にあった。
「そこ」と目の前を指さした。
先生はびっくりして「え、そこ?」と言ったが、いちおう自転車を押して家の前まで私を運んだ。
そこで母か祖母が応対したのだと思うが、その辺はあまり覚えていない。
私の記憶に強く残っているのは、先生がしきりと風邪をひかないか心配していたことだ。
あのおじいちゃん先生は親切で優しかった。
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