第16話 脱脂粉乳とマクニン

yucky 学童期(関西編)

   

脱脂粉乳

 昼どきに学校や病院に行くと、なんともいえないにおいがしてくるものだ。

給食のにおいだ。
   

あれを美味しそうと感じる人もいるかもしれないが、私は苦手だ。

どうして家のご飯のにおいと、給食のにおいは違うのだろうか。

一度にたくさん作ると、ああいうにおいになるのだろうか。

   

 そういうわけで1年生のころ、給食がほとんど食べられなかった。

それにあの脱脂粉乳だっしふんにゅう
   

牛乳のような味をイメージして 一口飲むと、全く違う。

うす甘い味がつけてあるが、それがさらに気持ち悪くしている。

とても飲み下すことはできなかった。

平気で飲んでいる子もいたが、私と同じように飲めない子もいた。

   

 あれはほんとうに人間の飲むものなのだろうかと思っていたが、後にあれは進駐軍の放出物資の一つで、本来、豚のえさなのだといううわさを聞いたことがある。
   

初めのうちは先生も飲ませようとしたが、そのうち、飲まなくても許されるようになったと記憶している。

   

 あるとき、給食にきつねうどんのようなものが出た。

これなら食べられるかも、と食べ始めると、先生が来て「そうそう、その調子、がんばって」と私の肩に手を置いてはげました。

優しい、おじいちゃんの先生だった。

私が食べてくれたのが、よほど嬉しかったのだろう。

   

マクニン

 そのころは、おなかに寄生虫きせいちゅうのいる子どもが多かった。

それで学校全体で「マクニン」と呼ばれる、虫下むしくだしの薬を飲まされた。
   

そのまずさは、脱脂粉乳にまさるともおとらないものだった。

表現のしようがない薄茶色の液体で、それがアルマイトのおわんいっぱいに入っていた。

それを全部飲めというわけだ。

   

 これはさすがに、ほとんどの子がいやがった。

飲んで見せた子はまさしく英雄えいゆうであった。

学校のどこで飲んだのか記憶は定かではないが、水道のところで飲むふりをして、ほとんど捨てたことを覚えている。

これはクラスにとても頭の回る女の子がいて、その子が教えてくれた方法であった。

      

 あんなに給食がきらいだったのに、その後6年生になるころには、おかわりまでするようになっていた。

不思議なものだ。

   

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