高校に入ったばかりの時、友だちに「デンケンに入らない?」と言われた。
「デンケン?」
聞けば、「電気研究部」のことだった。
ドイツ語の「考える」=「denken デンケン」ともかけているそうだ。
この部に好きな上級生がいるとのことだった。
へえ~?
でも電気はもっとも苦手な分野の一つ。全く興味がない。
しかし熱心に頼まれたので、入ることにした。
入ってみると全部男子で、女子は、同じクラスの私を含めた4人だけだった。
まず、受信機を作るという活動に参加した。
設計図のようなものを見て、線をつないでいく。
友だちはきちんと理解してやっていたようだったが、私はよくわからないまま適当にやっていた。
ただ、ハンダゴテを使って線を接続していくのが面白かった。
並行して「ハム」の資格を取るための講義が行われた。
講師は同期の男子だった。
「ハム」というのは当時人気があったアマチュア無線家のことだ。
無線を使って通信するためのアマチュア無線技士の試験を、私たちに受けさせようというのだった。
男子たちは、みなこの資格を持っていた。
「ハロー,CQ,CQ……、こちらJA1Y○○,JA1Y○○,○○○…… 感度あったら応答願います」と呼びかけ、交信する。
かっこいいなあ、やってみたかった。
しかし試験のためのお勉強は全く頭に入らず、私を除く3人はみごと合格したが、私は自信が無くて受けなかった。
電研もやめた。
ぶらぶらしていた秋のこと。
文化祭で、家庭科部が喫茶店をやるという話を聞いた。
おもしろそうと思って、仲良しの友だちと一緒に入った。
「喫茶店」をやれば上級生の彼が来てくれるだろうし、友だちも他の高校に行った彼氏を呼ぶのだと言っていた。
みな熱心にケーキ作りなどをしていたが、チャランポランの私たち二人は、ろくに準備にも参加せず、当日だけウェイトレスの格好をして喫茶店をやった。
その上、文化祭で合唱部がコーラスをすると聞いていたので、このときだけ合唱部に入り、ちょこっと練習に参加して、ちゃっかり当日のコーラスに参加した。
「ワシントンハイツ」でも書いたが、高校生になっても、こんな風に、いろいろな部のいいとこどりをして終わったらやめる、を繰り返していた。
もっとも非難されるようなことを、平気でやっていたのだ。
どういう神経だったんだろう。
極めつけが、社会科部だ。
一番つまらなそうな部だが、学年末のまとめとして旅行をすると聞き、これは見逃せないと思った。
同級の社会科部の男子に「入っていい?」と聞くと、「いいですよ」と少しオタク気味の男子が言ってくれた。
旅行の目的は伊豆巡り。
下田でペリー来航に関する資料を見たり、唐人お吉の話を聞いたり、修善寺に行ったり、韮山の反射炉を見たりした。
少人数だったこともあり、それまでに経験した旅行のなかで、一番楽しい旅だった。
このように、地道な活動は無理で楽しいところだけ味わうという部活のやり方を、咎められるような環境ではなかった。
私にとってはとてもよかった。
修善寺 https://www.shuzenji-kankou.com/access2.html
韮山反射炉
https://www.city.izunokuni.shizuoka.jp/bunka_bunkazai/manabi/bunkazai/hansyaro/documents/hansyarotoha.html
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